台湾で女子大生が失踪…国際犯罪組織「人蛇集團」の関与も? あまりに意外すぎる結末

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恐ろしいミャンマーの犯罪拠点

 なんとも肩透かしの結末である。とはいえ、Pさん自身が「彼氏」に騙され、働かされていることに気づいていない可能性も十分ある。彼女の主張をすべて鵜呑みにすることはできない。

 もともとミャンマーには、国境沿いに中国人が仕切るカジノがあった。民政化に移行した際、政権を握ったアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は、犯罪の温床になるとカジノを禁止。しかし2021年、クーデターを起こした国軍はカジノ業者から莫大な賄賂を受けとり、営業許可を与え、業者は一気に息を吹き返した。その拠点がタイ国境のミャーワディに近いシュエコッコーと北部のラウカイだった。

 国軍は反発する民主派を弾圧するために警察を動員し、現地では警察本来の業務が機能しない状態に陥っている。これを利用し、アジアの犯罪組織がこのカジノエリアに集まることになった。シュエコッコーにできた犯罪拠点であるKKパークは完全に無法地帯になり、ドラッグ、人身売買、臓器売買、特殊詐欺などがはびこっている。ラウカイもほぼ同じ状態だといわれている。ラウカイは中国国境の街で、中国人を騙す特殊詐欺の拠点でもあるようだ。ミャンマーの人々も「あそこは中国人を騙す詐欺グループの拠点。入ったら出ることはできない」と怖れている。

 もともと人蛇集團のような犯罪組織は、中国内で闇バイトを募っていた。しかし新型コロナウイルスの感染が広がり、中国のゼロコロナ政策を貫くなかでリクルートが難しくなった。そこで目を付けたのが台湾人で、集中的に台湾から「かけ子」を集めていく。騙された台湾人がミャンマー北部へ連れていかれるのはそのためだ。混乱しているミャンマーでは逮捕される可能性が低いことから、日本の特殊詐欺グループもすでに入り込んでいるという噂もある。対岸の火事ではない。

 フィリピンやカンボジアと違い、ミャンマーの犯罪拠点はドラッグ類が自由だという。騙されて働かされる人の多くが薬物中毒になっている可能性が高く、救出の障害にもなっていることが指摘されている。縁起でもないが「私は大丈夫」と救出を拒むPさんももしかしたら……という懸念は残るのだ。

(林綾子 下川裕治)

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