暴力団員が「阪神対ヤクルト戦を観戦しただけ」で逮捕のなぜ 20年前、甲子園の外野席を牛耳っていたのはヤクザだった

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〈暴力団関係者お断り〉。プロ野球の試合が開催されるすべての球場には、このような看板が掲げられている。その規約に違反したとして、阪神甲子園球場で阪神対ヤクルト戦を観戦した暴力団組員2人が建造物侵入容疑で逮捕された。なぜヤクザは野球観戦すら許されないのか――。それを理解するには、20年前にどこの球場でも当たり前のように繰り広げられていた光景を振り返る必要がある。

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外野自由席を占拠していた私設応援団

「チケットあるよー。余っているなら買うよー」

 2000年代初頭まで、どこの球場の周りにもこう呼びかけながら徘徊する強面のおじさんたちがいた。ダフ屋だ。今ではすっかり姿を消したが、昔は当日券が売り切れになっていても、球場まで行って彼らに声を掛ければ観戦できる時代だった。

 球場の中はもっとひどいことになっていた。外野の自由席にブルーシートなどを敷いて占拠する一団。彼らは警備員と結託し、堂々と自由席のチケットを転売して荒稼ぎしていた。この”ショバ屋業”で収益を得ていたのが「私設応援団」だ。しかも、私設応援団を牛耳っていたのはヤクザだったのである。

 とりわけ暴力的な存在として知られていたのが、阪神の私設応援団「中虎(ちゅうとら)連合会」だった。その名を有名にしたのは、2002年9月24日の阪神対巨人戦で発生した「甲子園球場長脅迫事件」である。

 この日、阪神は延長12回の激戦の上、巨人にサヨナラ勝ち。試合途中にマジック対象のヤクルトが敗れ、巨人のリーグ優勝が確定していた。

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