暴力団員が「阪神対ヤクルト戦を観戦しただけ」で逮捕のなぜ 20年前、甲子園の外野席を牛耳っていたのはヤクザだった

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読売新聞の記者までも動員

「巨人も当時、東京ドームに巣食っていた私設応援団に悩まされていたのです。会社から特命を受けた山口氏は、夏休み中の東京ドームを視察し、チケット売り場の前で母親に手を引かれた幼い男児が、炎天下の中、5時間以上も並んでいるのを見て心を痛めたそうです。親子は外野席に入場できたとしても、すでに席は応援団に占拠されている。絶対にこんな不条理を許してはならないと山口氏は考えた」

 そして、他球団や警察、他のマスコミとも連携し、ありとあらゆる手段を用いて球場から暴力団を排除することにしたのだ。

「応援団が不法行為を働いている証拠を徹底的にかき集め、事件化するよう警察に働きかけた。読売新聞社会部記者も動員されるほどの総力戦だったようだ。山口氏はこのような経験があるからこそ、原監督が暴力団関係者との交際疑惑があった中田翔を独断で獲得した際、不快感を示したのです」(同)

 私設応援団の摘発が続いていた最中の03年12月、12球団と警察庁、日弁連などによる「プロ野球暴力団等排除対策協議会」が発足し、「暴力団等排除宣言」を採択。阪神も独自に「阪神タイガース・阪神甲子園球場暴力団等排除対策協議会」を立ち上げ、中虎連合会は甲子園球場への出入りが禁止され、解散に追い込まれた。

「いまでは私設応援団はすべて球団の許可制となっており、反社関係者の出入りが確認されたらすぐに許可が取り消されるなど厳格に運営されています。NPBでは毎年2月に全球団が集まり、『暴排講習会』を実施。プロ野球から始まった暴排運動はJリーグや大相撲でも適用され、いまはあらゆるスポーツ観戦の場で暴力団関係者は出入り禁止です」(同)

 今回、甲子園球場で暴力団員2人が観戦した事件では、警察が球場近くで違法駐車を取り締まっていた際、2人が乗ってきた車の運転手を職質したことがきっかけで発覚した。

 阪神にどうやって2人が球場に入り込んだのか聞いたが、

「個別の事案についての回答は差し控えさせていただきます。引き続き阪神甲子園球場、管轄の警察署等、関係各所と連携しながら対応してまいります」

 との回答だった。

 なぜヤクザはプロ野球を観戦しただけでも逮捕されてしまうのか。それは国民の楽しみである野球観戦の場を、二度と暴力で支配されないという球界の“誓い”があってのことなのである。

デイリー新潮編集部

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