必要な総額は8兆円? 財源論は先送りに… 「異次元の少子化対策」は国家的詐欺か

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“やんなきゃいけねえんだ”

 人口問題の第一人者で、ベストセラー『未来の年表』の著者・河合雅司氏は、そもそも出生数の減少は避けられないという視点が重要だと語る。

「少子化の原因は出産可能な年齢の女性が減少していることです。例えば、合計特殊出生率が1.26と過去最低を記録した2005年の出生数は約106万人。その10年後、2015年は出生率が1.45に回復したのに、出生数は約101万人と減少したのです。なぜなら、10年間で出産可能な女性の数が減少したから。総務省によれば、この間、25歳から39歳の女性は17.7%も減少しています。出生率が上がっても出生数は増えないのです」

 今回の対策は出生数減のスピードを緩める効果はあるとしつつも、

「少子化対策というより子育て支援策です。例えるなら、飛行機に乗れずに困っているのに、機内サービスばかり充実させている。そうではなく、結婚できない人への支援の方が効果的です。真の少子化対策とは遠回りにはなりますが、産業構造を変えるような大改革を断行し、人口が減っても日本経済の成長が続くようにすることです。いまは先行きが見えず若者に不安が広がっている。未来への希望を具体的に示すことを政治家には求めたいです」(同)

 実現しても効果は期待できない上、財源の議論はこれからだ。先の青山氏は、

「岸田総理は問題の重要性を理解しているものの、具体案を持ち合わせておらず、細かい話になると“とにかくやんなきゃいけねえんだ”と周囲に繰り返し話しています。そうした状況で党内から出てきた提案のほとんどを『たたき台』に盛り込んでしまった。最大8兆円ともいわれるその財源について、社会保険料の上乗せが取り沙汰される一方、総理側近の木原誠二官房副長官は“教育国債でいいんじゃない”と漏らしています」

最終的に”ウソ”になる可能性

 財源を曖昧にごまかしている現状から「異次元の少子化対策」という花火を打ち上げることが本当にできるのか。スケールダウンした“線香花火”になりかねないのではないか。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう締めくくる。

「本来は少子化対策と財源はセットで議論すべきものです。お金の出所を曖昧にして、統一地方選の『票集め』という狙いがあるのなら、とんでもない話。財源の裏付けがなければ『たたき台』が最終的に“ウソ”になる可能性だってあるわけですから」

 大風呂敷を広げたままなら、巷の詐欺師と何も変わるまい。それこそ「国家的詐欺」と指弾されるのは必至である。

週刊新潮 2023年4月13日号掲載

特集「グランドデザインがない バラマキ岸田 『異次元の少子化対策』は国家的詐欺」より

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