必要な総額は8兆円? 財源論は先送りに… 「異次元の少子化対策」は国家的詐欺か

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貧困対策と少子化対策は異なる

 幹事長の暴走、党と官邸の溝、医師会の反対……。

 今回のたたき台が作成される過程でこうした問題点がいくつも露呈していたにもかかわらず、岸田総理は何も解決せぬまま、聞こえの良い政策ばかりを国民に示してきた。

 このたたき台で日本の少子化問題が解決に向かうのなら、それも許されよう。

 しかし、

「『たたき台』は従来挙がっていた政策の延長のような内容で驚くものではありませんでした」

 そう語るのは、中央大学で家族社会学を専門とする山田昌弘教授。「婚活」という言葉の生みの親としても知られる山田氏は続けて、

「児童手当を拡充したり、共働き支援を加速させたりと、提言されている政策はどれも間違ったものではなく、進めていかなくてはならないとは思います。一方、果たしてそれで若い世代が“子どもを産もう”となるのか疑問です。給食費の無償化も貧困対策であって、少子化対策ではありません」

「根本的な少子化対策になっていない」

 少子化の要因として、経済的不安を指摘する。

「その中でもっとも負担が大きいのが子どもの高等教育、つまり大学や専門学校の費用に対する不安です。日本人は“子どもに良い生活をしてほしい”という思いが強く、高等教育もしっかり受けさせたいと考える人が多い。今回のたたき台では給付型奨学金を拡充させるなどの項目があるとはいえ、規模が小さいと感じます。もっと大胆に高等教育の無償化などに踏み込むべきでしょう」(同)

 先の宋氏も「根本的な少子化対策になっていない」と感じたという。

「仮に私が3人目を検討していたとして、このたたき台を見ても、産もうとは決断しなかったと思います。子どもを産むと、その分収入が減り、生活費が増えます。たたき台の内容はその収支の変化を補えるほどではなく、女性が子どもを産んでも収入が減らない仕組みなどを検討すべきです。若い世代が子どもを産み育てることを肯定的に捉えられるような雰囲気を醸成するのが大切です」

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