ロッテリアを買収したゼンショー ハンバーガーが売れなかったら場合に備え、早くも考えている次の一手

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多角化のメリット

 企業経営にとって「分散」は「多角化」となる。多角化経営でリスクを軽減させるというわけだ。

「2003年、BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)問題が勃発し、アメリカ産牛肉の輸入が止まりました。このため牛肉を扱う外食産業は業績悪化に苦しみました。『焼肉きんぐ』を展開する物語コーポレーションも例外ではありませんでしたが、傘下にラーメンのチェーン店を有していたので持ちこたえました。『吉野家』も厳しい経営状態に陥りましたが、当時は傘下だった寿司チェーンの『京樽』に支えられました。これが外食産業におけるポートフォリオマネジメント、つまり多角化の成功例です」(同・千葉氏)

 ラーメン、寿司、牛丼、焼肉──1つの業態だけでチェーンを展開していると、不測の事態が起きたときに被害が集中してしまう。最悪の場合、倒産の可能性もある。

 だがゼンショーのように、牛丼、寿司、ファミレス、イタリアン、ハンバーガー……と多角化経営を推し進めると、どこかのチェーンで致命的なトラブルが発生しても、他のチェーンが好調ならプラスマイナスゼロが期待できる。

多角化の光と影

 ちなみにゼンショーは、2002年から09年までハンバーガーチェーンのウェンディーズを経営していた。だが、ロッテリアが持つ“資産価値”は、ウェンディーズとは比べものにならないという。

「合併によって、最盛期は業界2位だったロッテリアが持つ豊富なノウハウを手に入れることができます。さらに、今でもロッテリアは一等地に店を構えています。東京でいえば、銀座、新宿、池袋という繁華街で営業を続けているのです。また、社員数は約500人。外食産業に精通したこれだけの社員を新たに雇用することができるわけですから、これもゼンショーにとっては大きなメリットです」(同・千葉氏)

 第1にノウハウ、第2に優良店舗、そして第3に優秀な人材──これだけの“宝物”をゼンショーは合併で手に入れることになる。

 ゼンショーから見ればメリットしかないが、ロッテリアの社員やファンには懸念材料もあるという。

「M&A(企業の合併・買収)は、成功例と同じくらい失敗例も存在します。合併した側と合併された側で企業風土が異なり、大変な軋轢が生じて経営基盤を揺るがせたケースも珍しくありません。また、『ハンバーガーが大好きだからロッテリアに入社した』という社員は、合併後は行き詰まってしまう可能性もあります。ゼンショーは『あらゆる外食産業に対応できる』というゼネラリストを求めており、『ハンバーガーだけはプロ』という社員は必要ないのです」(同・千葉氏)

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