ロッテリアを買収したゼンショー ハンバーガーが売れなかったら場合に備え、早くも考えている次の一手

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 ロッテホールディングス(HD)は2月16日、「ロッテリア」を運営する子会社の全株式を、ゼンショーHDの子会社に売却すると発表した。読売新聞オンラインの記事「ロッテHDが『ロッテリア』売却…全国358店舗、ブランドは継続の見通し」はYAHOO!ニュースのトピックスに転載され、大きな反響を呼んだ。

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 ゼンショーは、「すき家」、「なか卯」、「はま寿司」、「COCO’S」などの外食チェーンを展開。公式サイトで紹介されているチェーンは20種にのぼる。

 一方のロッテリアは、1972年9月、東京都内に1号店を出店。以降は躍進を続け、業界1位のマクドナルドと激しく競い合った。87年に両店が「サンキュー・サンパチ戦争」を繰り広げたことをご記憶の方もいるだろう。

 マクドナルドは、それまで520円だった「バーガー+ポテトS+ドリンクS」というセットメニューを390円で販売。「サンキュー(390)セット」というダジャレも好評で、同年の新語・流行語大賞の大衆賞に選ばれた。

 それに対抗し、ロッテリアは同じ内容のセットメニューを10円安い380円で提供する「サンパチトリオ」で低価格競争に参戦した。担当記者が言う。

「今となってみては、買収される前のロッテリアはピークが80年代だったと言えそうです。90年代はマクドナルドに肉薄するどころか、業界2位の座をモスバーガーに奪われてしまいました。その頃からロッテリアのリストラに関する報道が相次ぎ、2000年代に入ると次々に店舗を閉鎖しました。Twitterで『ロッテリア』を検索すると、『近くにない』というツイートが目立ちます」

ポートフォリオマネジメント

 日本ソフト販売株式会社が発表する「【2022年版】ハンバーガーチェーンの店舗数ランキング」によると、1位は2937店のマクドナルドだ。

 2位は1249店のモスバーガー。このランキングはケンタッキーフライドチキンもハンバーガーチェーンに含めており、3位で1130店舗となっている。

 そして4位がロッテリア。店舗数は310店とベスト3から大きく引き離されている。

 原材料費の高騰など、外食産業を取り巻く環境は極めて厳しい。ロッテHDとしては、外食部門のロッテリアを切り捨て、社のリソースを菓子の製造と販売に集中させる狙いがあるようだ。

 では、ロッテが「いらない」と判断したロッテリアを、なぜゼンショーは買収したのか。それほど価値があるものなのか──?

 フードサービスジャーナリストの千葉哲幸氏は、「ポートフォリオマネジメントの典型例であり、ロッテリア買収の経営判断は極めて妥当だと言えます」と太鼓判を押す。

 ポートフォリオとはもともと「金融資産の組みあわせ」のことを指す。分散投資でリスクを軽減させるという考えだ。これが転じて「ポートフォリオマネジメント」という経営概念が生まれた。

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