「数式を普通の文章のように読む」 日銀新総裁・植田和男氏の天才エピソード、教え子が“酒豪ぶり”も証言

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 日本銀行の新総裁として白羽の矢が立った東京大学名誉教授の植田和男氏(71)。戦後初の学者出身の総裁であり、元教え子は「数式を普通の文章のように読む」と天才ぶりに舌を巻く。一方で相当な酒豪として知られ、六本木や銀座のクラブに頻繁に通っていたという意外な素顔も。

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 著名人が数多く住むことで知られる都内のさる高級住宅街。細い路地が交差する一角にひときわ瀟洒な2階建ての一軒家がある。

 今月9日夜、その玄関近くに集っていた記者団の前で家主の男性は前日までのピリピリした雰囲気から一転、憑き物が落ちたかのように上機嫌だった。そして男性は記者団を気遣うようにこう語りかけた。

「明日は雪が降るらしい、みんな暖かくしてよ」

 余裕を感じさせる口調は“前触れ”だったのか。かくして翌日、都内で大雪警報が発せられる中、日経新聞が打った一報に世界はくぎ付けになる。

〈日銀総裁に植田和男氏〉

 この報道には国内の関係者も度肝を抜かれた。何しろ新総裁の本命とされ、大手メディアが遮二無二追いかけていた冒頭の男性、雨宮正佳・日銀副総裁がトップの座に就かないことが明確になったからだった。

「誰もが予想しえなかったサプライズ人事でした」

 とは経済部デスク。

「約10年もの長期間、日銀のトップだった黒田東彦(はるひこ)総裁の後任が誰になるかは、世界的な関心事でした。その有力候補の一人が雨宮さんだった。黒田体制の下、2018年から現在まで副総裁を務め、その金融政策を熟知しているというのが主たる理由でした。そして、もう一人が中曽(なかそ)宏・大和総研理事長。同じく13年から18年まで副総裁だった方です。次期総裁は二人のいずれかだといわれていましたが、どちらも昨年から最近に至るまで、就任を固辞しているという情報が漏れ伝わってきていたのです」

雨宮氏が辞退した理由

 次の総裁は黒田総裁が進めてきた異次元の金融緩和の出口戦略という、国民生活を左右する非常に困難なタスクの遂行を求められる。有力候補の二人も「やりたくない」というのが本音だったのだろう。しかし、6日には日経新聞が「政府が雨宮氏に就任を打診」と報じた。

 自民党幹部が語る。

「雨宮さんは昨年秋の時点で“総裁はやらない”とはっきり断言していました。黒田さんの異次元緩和を推進してきた人ですから、これから金融政策が変わるときに、続けちゃいけないという気持ちがあり、さらに“世界の潮流として中央銀行総裁は学者なんです”とも言っていた。日本の場合、総裁は伝統的に日銀と財務省の出身者が交互に務める、たすきがけ人事になっています。雨宮さんはその伝統を廃し、次の総裁は学者に、という思いがあった。この話は昨秋の時点で私から総理に伝えています」

 日銀総裁を打診されて断るケースは前代未聞。日銀が大量の国債を買い入れ、維持してきた緩和について、当事者らが「もうこれ以上は無理。責任を取りたくない」と本心を吐露したようなもので、財界には「あり得ない」と衝撃が走った。

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