妻しか女性を知らなかったけれど…不倫してみたら「沼しかなかった」 小心者の40歳夫がメンタルを病んだ原因

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「これからは恋愛する」宣言

 多忙な日々だったが充実していたと雅斗さんは言う。雅斗さんに出張が入り、佳恵さんも仕事が忙しくなると、実母が渋々ながらも娘を預かってくれた。

「佳恵は急に電話をかけてきて、『ミカコさん、お願いします。今日、どうしても私、仕事が20時までなので保育園に迎えに行って預かってほしいの』と言うそうです。断られるなんて思ってないんですよね。母はだんだん佳恵に慣れてきて、『不思議な人ね。押しが強いのに、不愉快にならなくなってきた。おもしろいわ』と言うようになった。不思議な魅力があるんですよ、佳恵には」

 人を差別しない、来る者は拒まず去る者は追わずといった人との距離のとり方など、佳恵さんの生き方には雅斗さんも影響され続けてきた。

 そんな佳恵さんが、雅斗さんにある提案をしたのは、娘が小学校に入ったときだった。

「やっと小学生になったね、僕たちもがんばってきたよねと話していたら、佳恵が『雅斗、私、これからは恋愛するね』と言い出した。何を言っているのかと思ったんですが、彼女は本気でした。『今、好きな人がいるの。この恋は成就させないと後悔すると思う』って。は? と僕は口を開けたまま妻を見ていたようです。『そんな顔、しないでよ。雅斗のことは愛してる、でも恋は恋でしょ』と」

 どうやら佳恵さんの両親は、それぞれ外に愛人がいたらしい。それでも夫婦仲は悪くなかった、いや、むしろ仲がよかった。そんな親を見ていたから、結婚と恋愛は別だと彼女は自然と思うようになっていた。

「小さい子を犠牲にするわけにはいかないから、今まで我慢してきたけど、これからは恋もしたい、と。それはおかしい、常識からはずれていると言いたかったものの、彼女はもともと常識外で生きている。『じゃあ、僕が恋してもいいの?』と聞いたら、彼女は『もちろん。それは私がいいとか悪いとか言うべき問題じゃないでしょ』って。そういえば彼女も許可を求めてきたわけじゃない、恋をするねと宣言していただけだと気づいた。家庭の雰囲気を乱したり、娘に悪影響が及ぶのは不安だと告げました。佳恵は『大丈夫』と笑っていましたね」

 佳恵さんはフリーランスなので時間のやりくりは何とかなるのだろう。それから2ヶ月ほどたつと、ひとりでニヤニヤしていることが増えた。恋がうまくいったのだろうとわかったが、彼はあえて確認しなかった。さすがに佳恵さんも自分からその話はしようとしない。

「でも気になって気になってしかたがない。それでつい、どうなったのと聞いたら、『今、ラブラブ』とキャハッという顔で笑ったんですよ。ムカつくんだけど、その顔はかわいかったから笑うしかなかった」

 それからはかなり相手の男性にのめり込んだようだ。夜、娘が寝てから「今から20分だけひとりにして。娘が起きてきたら、雅斗、よろしくね」と言い、相手の男性と電話で話しこんでいることもあった。だが、半年後に突然、佳恵さんはおとなしくなった。携帯電話もほとんど見なくなった。

「別れたんでしょうね。わかりやすいですよね。僕もいつもと同じように接するだけで、どうしたのかとは聞かなかった。それから半年ほどたつと、また前のようにキラキラしている。また恋が始まったんだなと思う。見ていておもしろかった。恋しているときも僕とはよく出かけるし会話もいつも通り、夫婦生活もありましたから、気にしなければいいんだとだんだん割り切るようになりました。嫉妬がなかったわけじゃないけど、嫉妬したところで彼女の性格が変わるわけではない。どんな状況にも慣れるんですよね、人間って」

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