妻しか女性を知らなかったけれど…不倫してみたら「沼しかなかった」 小心者の40歳夫がメンタルを病んだ原因

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佳恵さんとの出会い

 佳恵さんと出会ったのは、SNSで知り合ったラテン音楽好きのグループでのオフ会だった。その日のうちに意気投合し、酔ったふたりは佳恵さんのひとり暮らしの部屋になだれこんだ。

「こんな気楽にしゃべれる女性がいるんだというくらい、彼女は話しやすかった。そのまま家に泊まって、当然のように男女関係になって。でも僕が慣れていないことに彼女は気づいたみたいで、“教育的指導”を受けました(笑)。僕は実家から職場に通っていたんですが、彼女の家のほうが会社に近いこともあって、それからはほとんど入り浸っていましたね」

 あまり帰宅しなくなった彼に、母親が「誰か好きな人がいるなら、ちゃんと結婚しなさいよ」と言った。

「1年ほどそんな関係が続いたとき、彼女に結婚しようと言ったんですよ。そうしたら彼女が、『結婚かあ、めんどくさくない?』って。笑っちゃいました。彼女はいつでも正直で、本音しか言わない。フリーランスで、けっこういろいろな仕事をしているんですが、生活力もある。収入を聞いてびっくりしたことがあります。僕よりずっとよかったから」

 彼が28歳のとき、彼女が妊娠した。妊娠するなんて思わなかった、命が宿るってすごいことよねと彼女は目をキラキラさせた。彼もうれしくなり、「どうせなら結婚したほうが子どものためにもいいんじゃないか」と“常識”を伝えてみた。

「そうねえと彼女は考えていましたが、ま、そのほうが便利ならそうしましょって。切り替えが早い。妊娠中も平気で仕事を続けていましたね。母親としてやっていけるのか、この人はと思ったこともあったけど、彼女は常識にはとらわれない人なんだと自分を納得させるようにしていました」

 無事に娘を出産すると、佳恵さんは雅斗さんに「育児休暇、とらない?」と言い出した。12年も前のことだし、雅斗さんの職場は大企業でもない。そんなことができるのかと思いながら上司に相談すると、「おもしろい。会社始まって以来だから、とれとれ」と言われた。

「その上司、かなり型破りな人なんですよね。社長にもかけあってくれて。3ヶ月の育休をもらいました。その間も家では仕事をしていたので、完全な休みにはならなかったけど、妻も仕事をしながらでしたから、お互いにうまく時間をやりくりしてふたりで子育てができたのはありがたかった」

 佳恵さんにはすでに両親がいなかったから、雅斗さんの母親が手伝いに来ると、まるで自分の母親のように甘えた。ところが、ふたりの娘をもつ母には、佳恵さんの態度がなれなれしく映ったらしい。

「佳恵は一般的に見ると少し変わっていて、すぐに人を名前で呼ぶんですよ。僕と知り合ったときも、『雅斗さん』とその場で名前を呼んだ。他の人に対しても同じです。そして僕の母にも『ミカコさん』と名前呼び。それがどうも母にはしっくりこなかったみたいですね」

 日本ではなかなか姓ではなく名前を呼ぶ習慣がない。だが佳恵さんは帰国子女、しかも中学生までアメリカにいたので、彼女にとっては当然のことだったのかもしれない。

 生後7ヶ月になると、佳恵さんは保育園に子どもを預けて、全面的に仕事を再開した。

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