半導体戦争で板挟みになる韓国 米国の圧迫と中国の嫌がらせ…頼みの綱は日本の輸出管理撤廃

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ホワイトリストに戻すと日本が約束

――米国がそんなことをするでしょうか?

鈴置:米国は安全保障にかかわることなら何でもやります。韓国もそれを知っているからこそ、日本の対韓輸出管理の強化を執拗に撤廃させようとしてきた。

 安倍晋三政権によって自分の喉元に突き付けられた刀を、一刻でも早く降ろさせたいのです。日本が持っている刀だけど、米国が使う可能性も大いにあるのです。

 文在寅政権だけではありません。尹錫悦政権も同じです。最近、自称・徴用工問題が解決する際には、半導体用素材3品目の対韓輸出の管理緩和と、韓国をいわゆるホワイトリストに戻して兵器拡散の監視対象から外すことを日本が約束した、と韓国紙が一斉に書きました。

 朝鮮日報の「徴用解決案が出れば…日本の輸出規制は解かれる」(1月16日、韓国語版)、中央日報の「韓国発徴用対応策に合わせて日本では輸出規制解除…『シャトル外交も復元』」(1月16日、日本語版)などです。

 いずれも東京特派員の記事ですから、訪日した外交部高官が記者を集めて「希望的展望」を語ったのでしょう。それほどに、韓国は半導体素材の締め上げによる制裁を恐れている。

 半導体分野で完全に米国側に戻れば、素材供給を絞られる心配もなくなるわけですから、韓国が当分、米中二股を続けるとの傍証でもあります。

自分の武器を知らぬ日本人

――日本政府は輸出管理の緩和を約束したのでしょうか。

鈴置:その可能性が高い。対韓強硬派の議員の中にも「韓国と関係改善の折には緩和することになる」と言う人が多い。輸出管理の強化を二国間問題として、まだ捉えているのです。

 米中半導体戦争が勃発して以降、素材や製造装置が日米の強力な武器になったことに気づかない人が多い。そして、尹錫悦の韓国が未だに洞ヶ峠を決め込んでいることへの認識も薄い。

 韓国政府や日本の外務省が展開した「韓国は我々の側に戻った」キャンペーンに騙されているのです。それは議員に限らず、学者や記者も同様ですけれど。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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