半導体戦争で板挟みになる韓国 米国の圧迫と中国の嫌がらせ…頼みの綱は日本の輸出管理撤廃

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装置は西側、生産・市場は中国

――「半導体封鎖網に参加するしかない」との声はどこから上がっていたのですか?

鈴置:主に保守の側からですが最近、経済界からもそうした意見が出始めたので注目していました。例えば、韓国貿易協会が2022年12月23日に発行した調査レポート「グローバル半導体供給網再編による韓国の機会と脅威要因」です。

 貿易協会らしく世界の貿易統計を駆使して韓国、米国、日本、台湾、中国の半導体、同素材の国別対外依存度を分析。結論として、米国主導のグローバル半導体供給網の再編は「韓国にとり、安定的な供給網構築と新規市場進出の機会になる」と肯定的に評価しました。

 ただ、「そのためには再編に参加する過程で、韓国の最大輸出市場である中国との関係の設定が必要」と対中配慮も付言しました。

 要は、半導体の製造装置も素材も米国を中心とした西側に依存しているから西側から離れるわけにはいかない。世界最大の中国市場も重要だが、いざとなれば西側の市場を開拓することで補完できる、との判断です。

 この報告書には書いていませんが、中国半導体メーカーはメモリー分野で急速に追撃中。どの道、中国市場での韓国のメモリーの優位性は失われる、との計算もあると思われます。

小早川秀秋なら、米国から銃撃

――半導体での西側回帰。そんなにうまくいくのでしょうか?

鈴置:うまくいかないと思います。報告書には、回帰の過程で中国からビンタを食らう、との想定が抜けています。「短期的には中国との摩擦を最小化する水準で米国との協力を維持し、次第に中国への過度な依存を減らせばよい」と提言していますが、封鎖網に加わる前から早くもビザで脅されてしまった……。

──結局、韓国は半導体封鎖網への参加を先送りするのでしょうか?

鈴置:下手に先送りすれば、今度は米国からビンタを食らうでしょう。バイデン政権は米中半導体戦争に賭けています。血を流す戦争をせずに中国の台湾侵攻を食い止めるには、経済戦争で屈服させるしかない。

 そんな状況下で韓国が西側への復帰を逡巡すれば、米国が韓国に対しても制裁をちらつかせるのは確実です。関ヶ原の戦いで、寝返りを逡巡する小早川秀秋の陣に徳川家康が鉄砲を撃ちかけさせ、それを催促したのと同じです。

 日本と米国から、韓国への半導体製造用の素材供給がなぜか細ってしまう。調べてみたら米国が後ろで糸を引いていた――なんてことが十分にありうるのです。

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