妻に“赤ちゃん言葉”で甘えたせいで夫婦関係に深い亀裂が…45歳夫が不倫相手を「ソウルメイト」と呼ぶ衝撃の理由

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「すべて」を受け止めることはできない

 翌日、宣代さんから、「彰良に会ってくれてありがとう。話は聞いた」と連絡が来た。彰良さんはどこまで妻に話したのだろう。その直後、彰良さんからも連絡があった。赤ちゃんプレイに関しては「そういう店に行っているわけではなく、子ども扱いされたい欲望があるのだと思うということを話した。アイちゃんのことはもちろん話していない」ということだった。

 宣代さんは、「私は彰良に無言のプレッシャーを与えていたのかもしれない」とつぶやいた。彼には大人ぶっているところがある。無理させていたのではないか、と。

「昨夜は久しぶりにいろいろ話して、一緒に寝た。私は彰良のすべてを受け止める覚悟をしているとも伝えた」

 宣代さんが「すべて」を受け止めることはできない。彼はおそらく全部は話さないからだ。そしてアイちゃんとの関係もしばらくは続くのだろう。宣代さんにわからないようにするのが鉄則だし、彼もそれは重々、承知しているようだ。

 心の深い部分に、誰もが暗いものをもっていると思う。それを封印して生きる人もいれば、別のものに昇華する人もいる。抱えていないふりをしたり、抱えていても気にとめない人もいるかもしれない。どういう形であれ、自分が少しでも生きやすくするために人は工夫を凝らしてしまうものなのではないだろうか。生きていくためにはそれもやむなしとするしかないのだ。

 ***

 妻に打ち明けられない「性的志向」をもつ彰良さんは、性風俗店でそれを発散させ、そのつながりから出会った人妻のアイさんと「ソウルメイトのような」「互いがセーフティーネットのような」関係を築いている。世間一般の感覚からすればこれは不倫であろうし、少なくとも妻の宣代さんが快く受け入れる話ではない。だからこそ亀山氏も〈宣代さんにわからないようにするのが鉄則〉だと書いている。

 興味深いのは、彰良さんはアイさんとの関係そのものについては悪びれる様子がない点だ。一方で、彼は一貫して“えげつない”という言葉で、自分のある面を自己批判的に呼び続けている。

 それは「赤ちゃんプレイ」のような具体的な行為というわけではなく、どうやら似た境遇のアイさんと自己肯定感の低い者同士で惹かれ合うことそのものを指すようだ。「赤ちゃんになりたい」願望、この志向を満たす方法のひとつに過ぎないのかもしれない。

 そしてこの志向は、宣代さんで満たすことはできないはずだ。それをわかっているからこそ彰良さんは“えげつない”と表現し、妻にすべてを打ち明けることを避けている。

 目下の夫婦の問題は、嘘を伝えることでやりすごした彰良さん。この後も自身の性的志向とうまく付き合っていくことはできるのだろうか。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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