妻に“赤ちゃん言葉”で甘えたせいで夫婦関係に深い亀裂が…45歳夫が不倫相手を「ソウルメイト」と呼ぶ衝撃の理由

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「恥ずかしくて妻と顔を合わせられない」

 それは秘密がバレた瞬間なのではないだろうか。もちろん、宣代さんもその後、そのことに気づいた。だが、それを彰良さんに言っていいかどうかわからない。そうこうしているうちに彼の帰宅が遅くなり、ついに先日、外泊したのだという。

「彼、年下ということもあるのか、ええかっこしいのところがあるから、あんな場面を見られて耐えられなかったのかもしれない。でも私は、そういう彼でもかまわないと思ってる。赤ちゃんプレイというの? 彼がそれを好きなら協力してもいいくらい」

 彼に話を聞いてみてくれないかと宣代さんは言うのだ。彰良さんが了承するかどうかわからないと言うと、それとなく会うように仕向けておくという。宣代さんを通して彰良さんとも面識があるから、会うのはかまわないのだが、それで彼が嫌な思いをするかもしれないと私はぐずぐず迷っていた。

 だが、数日後、彰良さんのほうからメールがきた。会って話したいと言う。ふたつ返事で彰良さんに指定された居酒屋に会いに行った。

「にぎやかな場所のほうが話がしやすいような気がしたんです。わざわざ来ていただいてすみません」

 彼は礼儀正しくそう言って頭を下げた。

「聞いてますよね、僕と宣代のこと」

 彼はフッと笑って「とんでもないところを見られてしまったから、とにかく恥ずかしくて宣代と顔を合わせられないんです」とつぶやく。

「まあ、でも誰にでも何かしらの嗜好も志向もあるものだし」

 そう言いかけると、「ただ、それだけじゃないんです」と言い出した。

「宣代と一緒にいると、僕は本当に楽しい。彼女は僕の長所を引き出してくれるんですよ。だけど僕には例のプレイのような側面もある。もっとえげつないところもある。そのえげつなさでつながってしまった女性がいるんです」

志向をはぐくんだ家庭環境

 え? 赤ちゃんプレイだけじゃないの? 心の中でそう突っ込んだが、おそらく表情には出ていなかったはずだ。そもそも赤ちゃんプレイはいつごろから愛好するようになったのだろうか。

「僕の生育歴が関係しているんだと思います。うちは母親がいませんでした。父方の祖父母と父と10歳離れた兄の5人家族。物心ついたときは母がいなくて、兄は高校卒業と同時に家を出て行ったから、僕は8歳から大人だけに囲まれていた。両親の事情も知らずに大きくなったんですが、中学生のころかな、遠い親戚から『あんたのばあちゃんがお母さんを追い出したんだよ』と聞かされた。父親に確認したかったけど、うち、じいちゃんが酒乱で、飲むと暴力をふるう。息子である父親は怒ってじいちゃんを張り飛ばすみたいな家庭で……。真実を知りたいと思っても、そんなこと問いただせる状況ではなかった。僕が高校生のころ祖父が飲んだくれたあげく、階段を踏み外して亡くなったんです。そのとき初めて父親に謝られました。『ひどい家庭だった、ごめん』と」

 父が言うには、祖父はかつて彰良さんの母親を「手込め」にしたそうだ。それを知った父親は祖父と殴り合い、離婚して妻を解放しようとした。この家にいたらもっとひどいことになると思ったからだ。だが母は子どもを置いて行くことはできなかった。酒乱の祖父は母にも暴力をふるうようになり、母は心を病んだ。父は祖父だけ置いて一家で逃げようともしたが、そんなときに限って祖父は泣いて謝る。心優しい父と母は逃げられなかった。そして結局、母はさらに心を病んで実家にひきとられていった。その後、亡くなったという。

「おそらく自殺なんじゃないでしょうか。父はそれを僕に知らせたくなかったのか、あるいは病死だと思い込みたかったのか……。いずれにしてもエグい話ですよね。聞かされたときはショックというより、糞みたいな家庭だと思った。兄がさっさと家を出ていったのもよくわかりました。僕も大学に入るために上京、それ以来、実家とは疎遠のままです。祖母ももう亡くなったと聞いていますが、父がどんな暮らしをしているのかはよくわかりません」

 祖母はいつもおどおどしていて、愛情表現をしてくれなかった。彼は「愛される」ことがどういうことなのかわからなかった、今もわからないのかもしれないと寂しそうに言った。

「恋愛というものもあまりしたことがなかったんです。大学生のとき、アルバイトで家庭教師をしていたんですが、その家の奥さんに誘惑されて初体験しました。彼女が僕を『彰良ちゃんはかわいい』と言ってくれて、かなり子ども扱いされたんですよね。素直に彼女の言うことを聞いているとかわいがってもらえた。赤ちゃんプレイは、その延長線上にあるのかもしれません。甘えたいというより、子どもになれば愛されると思っているのかなあ」

 自分でもよくわからないけどと言いながら、彼は自己分析してみせた。社会人になってから、先輩にそういうお店に連れて行かれ、赤ちゃん返りをしてみたら店の女性にとても優しくしてもらった。無条件にかわいがられるのは赤ちゃんだけなのかもしれないと彼は思ったそうだ。

「現実的には僕は空手をやっているし、身を守る術は身につけた。じいちゃんの暴力があったから父が僕に習わせたんです。空手は武道として好きだけど、現実には僕は暴力はふるったことがない。怖くて人なんて殴れないですよ」

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