“暴動”も起きた韓国のマンションバブル崩壊 国民の借金体質が金融・通貨危機を招く

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建設会社の倒産が始まった

――今後の展開は?

鈴置:建設会社の倒産が始まりました。TV朝鮮の「違約金を払い分譲を取り消し…連鎖倒産の恐れ」(12月14日、韓国語による動画)は以下のように報じました。

・今年だけですでに地方の建設会社10社が倒産しています。このまま行けば、不動産発の経済危機が現実化するとの暗い見通しも出ています。

 韓国では施工を担当する建設会社もマンション分譲事業に出資するのが普通です。工事や分譲が遅れることで、資金繰りに詰まる中小建設会社が出ているのです。

 政策金利の引き上げとマンション不況のために、建設会社への貸し出し金利も高騰しています。マネートゥデイの「『2・5億の出血セール』『外車を贈呈』…『売れ残りを投げ売る』建設会社のウラ事情」は「10%未満だった貸し出し金利が20―30%に跳ね上がった」と報じています。

 財閥系の建設会社までも貸し渋りにあっています。ロッテ建設が同じグループのロッテホームショッピングやロッテ精密化学などから、10月以降の1カ月間で合計1兆1000億ウォン(1100億円)を借りました。マンション建設用の資金を金融機関から調達しようとして失敗したのです。

 経済紙、亜州経済の「ロッテ建設、また資金借り入れ…ロッテホームショッピングから1000億ウォン規模」(11月11日、日本語版)で詳細を読めます。

 大手の都市銀行は不安定なマンション事業への融資には消極的なため、建設会社におカネを貸しているのは主に証券会社や、貯蓄銀行と呼ばれる中堅の金融機関です。

 韓国銀行は建設業界で発生する不良債権の増加による金融システムの動揺を懸念し、11月初めに証券会社に対する特別融資に乗り出しました。

 ただ、特別融資に応じた証券会社は出なかったようです。融資を受け入れると「危ない会社」との烙印を押され、信用不安が増すからです。韓国経済新聞が「韓国銀行が6兆の支援に出たが、レポ取引を要請する証券会社は“ゼロ”」(11月4日、韓国語版)で報じました。

 TV朝鮮の「違約金を払い分譲を取り消し…連鎖倒産の恐れ」が「不動産発の金融危機」を懸念したのも、決して大げさな話ではないのです。

世界一の家計負債

 高金利は別の経路を通じても韓国経済に打撃を与え始めました。マンションを買おうと借金をしていた個人が破産する例が出てきたのです。これが続けばおカネを貸していた金融機関の経営がおかしくなります。

 先ほど申し上げたように、マンションバブルに乗り遅れまいと焦った人々がおカネを借りまくって購入費用に充てた。ところが基準金利の引き上げで支払うべき利息も膨れ上がり、生活ができなくなりました。

 マンションを売って返済しようにも値下がりしていて借金も返せない。そもそも市場が凍てついていて、買ってくれる人を見つけるのが大変です。

 ちなみに韓国の不動産ローンの70%強が変動金利です。政策金利が0・5%の時は3%前後の利払いで済んでいたのに、政策金利が3・5%に上がった今、ローンの金利は7%に達します。

 日本円に換算すれば、5000万円借りていた人の年間の利子は150万円から一気に350万円に膨れ上がったのです。1カ月に直せば、12万5000円から30万円弱に。これでは生活が立ち行きません。

――でも、借金している韓国人ばかりではないでしょう。

鈴置:そこが、日本人の想像を超える点です。韓国人は「借金している人ばかり」なのです。韓国は異様な借金大国です。

 OECDの統計によると、韓国の家計債務は可処分所得の206・48%(2021年)。日本の115・37%(2020年)、米国の101・10%(同)と比べ突出しています。

 国全体で見ても、韓国は家計負債が世界で唯一、GDPよりも大きい国とされています。国際金融協会(IIF)の2022年第1四半期のデータによると、韓国のGDPに対する家計債務の比率は104・3%。

 米国が76・1%、日本が59・7%なので、韓国という国自体が借金で回っていることが分かります。ハンギョレの「韓国の家計債務、GDP比104%…依然として世界1位」(6月6日、日本語版)から引用しました。

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