姉と婚約中に2歳年下の妹と…2人の間で苦しんだ「浮気夫」の12年 翻弄のすえ出した結論は

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 既婚者を対象にした「結婚の決め手」についての調査では「一緒にいてラクだから」「居心地が良い」といった回答が上位を占める(みんなのウェディング21年5月7日 、omotteマガジン22年7月6日 )。また11月22日の「いい夫婦の日」にちなんで実施された今年の最新調査によると、夫婦の出会いのきっかけのトップは「マッチングアプリ 」だった(明治安田生命調査)。

 ふたつの調査結果からは、昔に比べ自分に「合う」相手を吟味する結婚が増えているということだろうか。

 ところが、男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏が今回取材した男性の結婚生活は、不本意な形でスタートし、それが12年間も続いた。3年前に一応の決着を見せるも、いまだ釈然としない気持ちを抱えているようだ。

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 結婚した男性にそのきっかけを尋ねると、「相手を好きになって、この人以外は考えられなかった」と答える人の少ないことに驚かされる。もちろん照れもあるだろう。本人の中では大きな決断をしたのだと思う。だが、表現としては「そろそろ結婚したほうがいいと思ったから」「つきあいが長かったから」「子どもができたから」など現実的になってしまう。大恋愛の末、という答えを期待しているとするっとはずされることが多いのだ。

 樋口信一朗さん(42歳・仮名=以下同)は、「女性に翻弄されてきた 人生を送ってきた」と苦笑する。現在、彼は外資系企業に勤めながら副業として会社を経営しており、かなりの収入があるようだ。

 紹介してくれた人が、信一朗さんを「バリバリ仕事をし、忙しい時間をやりくりして『好きな人』との逢瀬も楽しんでいる男だ」と少し皮肉っぽく言っているのが気になっていた。信一朗さんに言わせると、「僕の人生はもっと混沌としている」という。

 そもそも彼は大学生時代からつきあっていた同い年の麻奈美さんと結婚するつもりだった。大恋愛というほど切羽詰まった関係ではなく、友だちとしての感情が強かったが、「一緒に人生を伴走したい相手」だったのだ。それが崩れたのは、28歳で麻奈美さんと婚約してからだ。

「彼女には佑香という2歳年下の妹がいました。ちょっと物憂げな子で、麻奈美とは対照的な感じ。麻奈美にいわせれば『いい子なんだけど、どこか内向的で友だちも少ないの。子どものころ、病気がちだったからかもしれない。そのせいで私は親の愛情が妹にばかり注がれていると思っていじけた時期もあった。だけどあとから思えば親の目が届かないから、早くから自由になれたのよね』ということでした。麻奈美は自分の意志で人生を切り開いていくようなタイプ。そこが好きだったんです」

 それなのに信一朗さんは婚約後、義妹になるはずの佑香さんに強烈にアプローチされ続け、ついに陥落してしまったのだ。どうしてそういう関係になってしまったのか、今振り返ってもわからないと彼は言う。ただ、麻奈美さんから聞いたのとは違う、佑香さんの顔を見たとき 、彼は衝動を抑えきれなかった。

「真冬のどしゃ降りの日、残業を終えて帰ると、ひとり暮らしのアパートの前で、佑香がじっと佇んでいたんです。それまでも佑香からは『ふたりで会いたい』『私の話を聞いて』とさんざんメールが来ていました。最初は未来の義兄として相談に乗ろうと思ったこともあります。麻奈美にもそう言ったんです。そうしたら麻奈美はふたりでは会わないでほしい、あの子は思い詰めると何をするかわからないからって。姉妹のしこりみたいなものを感じたので、佑香とは会わずにいた。そうしたらうちに来ちゃったわけです」

 寒さに震えている佑香さんをそのまま帰すわけにはいかなかった。そもそもすでに電車もない時間になっている。部屋に入れ、温かいお風呂を勧めて、彼は熱いうどんをさっと作って食べさせた。佑香さんは何も言わず、うどんをすすりながら泣いていた。

「こっちも若い男ですからね、今なら説教のひとつもして帰せるかもしれないけど、あのときは彼女の地の底を這うような暗い雰囲気に気圧されて引きずり込まれた。彼女が抱きついて首に両手をまわしてきて。はねのけることができなかったんです」

 ねっとりとした雰囲気をまき散らす彼女に、されるがままになった。衝撃的な体験だった。睡魔に引き込まれ、目が覚めたら佑香さんはいなかった。書き置きひとつなかったが、うどんのどんぶりはきれいに洗ってあった。

「夢かうつつかわからなくなりました。その後、ふたりとも多忙で、麻奈美とは3週間近く会えなかったんです。久々に会ったら、麻奈美が心なしか沈んでいる。『なんだか妹の様子がおかしいのよ』と言われてドキッとしました。もちろん僕は佑香のことは忘れてはいなかった。ただ、忘れようとしていたんです」

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