姉と婚約中に2歳年下の妹と…2人の間で苦しんだ「浮気夫」の12年 翻弄のすえ出した結論は

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久しぶりの再会に…

 それが3年前のことだ。彼は麻奈美さんと12年ぶりに会った。

「麻奈美は変わっていなかった。むしろきれいになったくらい。佑香は独身時代より太ってしまったけど、麻奈美はスレンダーなまま。僕は言葉が出ませんでした。麻奈美も黙ったまま。ホテルのラウンジでふたりでにらみ合いみたいになって。『それで? 今さら会いたいってどういうこと?』と麻奈美は僕を見つめました。気づいたら僕は泣いていた」

 つらかったのだと初めて気づいた。佑香さんと結婚したことも、麻奈美さんを失ったことも、意に染まない結婚生活を続けたことも。静かに涙をこぼす彼を見て、麻奈美さんも目を潤ませた。

「あなたは自分が不幸だと思って泣いているのかもしれないけど、私の気持ちを考えたことがあるの? 麻奈美にピシャリとそう言われました。心が切り裂かれるようだった。床に倒れて悶えそうでした。なんとか体勢を立て直して『ごめんなさい。本当に申し訳なかった』と頭を下げました」

 12年もたってから何を言ってるの、探す気なんてなかったんじゃないと罵られながら、彼は幸福感を覚えていた。麻奈美さんに怒られているのが気持ちよかった。

「やっぱりオレには麻奈美しかいないんだと本音を言いました。麻奈美は立ち上がって、『このホテルに部屋をとってるの。あなたに覚悟があるなら来て』と部屋番号を告げて去っていきました。どのくらいの時間、僕は固まっていたかわかりません。でもとにかく、二度も麻奈美を失うわけにはいかないと思った。告げられた部屋へ行きました」

 ノックすると麻奈美さんがドアを開け、そのまま彼に抱きついてきた。麻奈美さんを抱き上げてベッドにそうっと横たえた。互いをむさぼるような嵐の時間が過ぎ、彼が起き上がると近くの椅子の背もたれに男もののセーターがかけられていた。

「男がいるのかとつぶやいたら、麻奈美が『いないわけないでしょ』って。麻奈美には麻奈美の生活がある。それがわかったから、僕は帰ろうとしました。『私とこんなことになって、それでも佑香のところに帰るの?』『だってきみにも夫がいるんだろ』『いないわよ、夫なんて。遊びの男を泊めただけ』。そんなやりとりがありました。どこか自堕落な口調なのが気になった。それも僕のせいだと思うと苦しくてたまらなかった」

 その後、信一朗さんと麻奈美さんはときどき会うようになった。彼は離婚して、麻奈美さんと一緒になりたいと本気で考えたが、それがいかにむずかしいことかもわかっていた。一方、麻奈美さんは先のことは口にしなかった。

「半年ほどたったとき、帰宅すると佑香が玄関に仁王立ちになっていました。ギョッとしましたね。『麻奈美と会ってるんでしょ』と佑香が絞り出すように言った。この場をどうやって切り抜けようか、瞬時にいろいろ考えましたが、適切な言葉が出てこなかった。『麻奈美から連絡があったのよ。奪い返したからねって』と佑香は涙ながらに訴えました。それで僕は自分が姉妹の争いに巻き込まれていると気づいたんです」

 彼はそのまま家を飛び出し、その日は駅前のビジネスホテルに泊まった。なかなか帰宅する気になれず、ずるずると数日間、そのホテルに泊まり続けた。

「そんなとき麻奈美から連絡があったので、『もうふたりに利用されたくない』と電話を切ったら、またすぐ麻奈美からかかってきた。『何があったの? とにかく話して』と言われて佑香にオレたちの関係を話しただろうと言ったら、麻奈美に冷笑されました。『12年前、私がどんなにつらい思いをして身を退いたか、やっぱりあなたにはわかってないのね。私が佑香に連絡するはずがないでしょ。あなたは佑香に騙されてるの』と。佑香の芝居がかった涙を思い出しました。本当に僕は、何度も麻奈美を傷つけた。絶望的な気持ちになりました。と同時に、僕がやっぱり本気で好きなのは麻奈美なんだとわかった。そう言っても麻奈美は信用してくれなかったけど」

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