ある日、胃がんが発覚したアラフィフ夫 それを知った妻と不倫相手の反応で感じた“2人の性格問題”

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きっかけは子どものスイミング

 40歳のときだった。同い年の里香さんと出会ったのは。子どもたちが通うスイミングのコーチで、佳恵さんは「女らしくない先生」と陰口をたたいていたが、貴典さんは彼女に好感をもっていた。

「子どもたちは土曜日の午後、習っていたので、いつも送り迎えをしていました。子どものスイミングを横目で見ながら本を読んだり、ときには仕事の資料を読んだり。帰りがけに里香先生が、子どもの様子を伝えてくれるのが楽しみでした。前はできなかった平泳ぎの足が上手にできるようになったとか。そういう話をしてくれるときの彼女の顔が、とても愛情深いなあと思っていました」

 同い年であること、彼女は若いときに一度結婚し今は高校生になる息子がいるシングルマザーだという話もこっそり聞き出した。

「その後、勤務先の近くで彼女にばったり会ったんですよ。彼女が仕事をしているスイミングクラブの親会社が近くにあるとかで来たんだ、と。時間があったらお茶でもと誘いました。僕も外回りに行くところだったんですが、まだ早いし、いいか、と(笑)」

 ほんの30分ほどだったが、会話は弾んだ。彼は彼女が「自分と同じ世界にいる人」という感覚を強くもったという。

「結婚生活を続けるにつれ、佳恵は僕とは違う世界の人なんだと思うようになっていたんです。そういう分け方はよくないとわかっているけど、妻は何の苦労もなく育ったタイプ。でも里香は何か違う。それは離婚から来るものなのか生育歴から来るものなのか、そのときはわからなかったけど。でも何か似た匂いを感じたのは確かです」

 またお茶でもしましょうと別れる寸前、彼女のほうから「ご連絡さしあげてもいいですか」と言ってくれた。彼のほうが聞きたかったが、失礼だと自重したのだ。だから喜んで教えた。ところが彼女からは一向に連絡がなかった。その週末は彼が出張でスイミングクラブに行けなかったのだが、それでも連絡はなかった。

「焦れて自分から連絡しました。そうしたら『あのとき、あまりに楽しかったので勇んで連絡先を聞いてしまったけど、ご迷惑だと思い直したので連絡しませんでした』とメッセージが来た。そういうタイプの人なんだなあとますます好感を持ちました。佳恵を口説きまくったときとは違う、もっと落ち着いた感情がわき起こってきました。この人ならわかってくれる、僕も彼女をわかることができるかもしれない。そんな感じです」

離れがたき「相性」

 一目惚れとは違う、40年生きてきたからこそわかる、人として信頼できるかどうかの感覚。そんなものを感じていたようだ。だが行動的な貴典さんは、すぐに彼女を食事に誘った。

「もうじき息子がサッカーの合宿で泊まりになるので、そのときにと彼女は言ってくれました。もうひとつ、僕が彼女を信頼したのはその後、スイミングクラブに行っても、まったく態度が変わらないんです。以前より親しい雰囲気を見せるでもなく、他の保護者とまったく同じように接してくれる。好感から恋心に移っていったのは、そんな彼女の人間性かもしれません」

 理屈ではないところで惹かれたのだから、理性では止めることができない。彼は、食事に行ったあと里香さんを送っていき、そのまま「ごく自然に」結ばれたと語った。

「ちょっとえげつないことを言っていいですか」

 そう前置きをして、彼はいかに彼女との体の相性がよかったかを私に話した。具体的に尋ねればつぶさに答えてくれる。それがいかに彼の人生観すら変えたか、人と親密になることを実は自分は恐れていたのだと言った。

「子どもがいるのだから、もちろん妻とはそういう関係がありました。でも行為があたかもふたりで音楽を奏でるかのように反応しあって、高まっていくかを僕は知らなかった。妻とはそういう喜びを作れなかったということです」

 初めてなのに、彼女がどうすれば喜んでくれるのか、彼はどうしたがっているのか、お互いにわかった。そしてその最中、互いの目の奥に潜む欲望と愛情を感じ取ることができたのだと彼は言った。こうなれば離れられない。

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