「ハイサイおじさん」の喜納昌吉、なぜ沖縄から嫌われる? YMOにも影響を与えた異能の音楽家の半生

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なぜ本人のコメントがない?

 が、この番組には不可解なところがあった。高校野球の沖縄勢の活躍を支えたのは「ハイサイおじさん」であると伝えながら、「ハイサイおじさん」の作者であり、歌い手である喜納昌吉のコメントやインタビューが一切登場しなかったのである。

「ハイサイおじさん」は、のんだくれの近所のおじさんと少年時代の昌吉とのコミカルなやり取りを歌にしたものだが、おじさんが酒浸りになった背景には、心を病んだおじさんの妻が、娘を殺して首を落とし、それを鍋で煮て食べた末に自殺するという凄惨な事件があった。昌吉は、苦しみを酒で紛らわそうとするおじさんへの親愛の情を込めてこの歌を作ったが、番組では、こうした経緯にもろくに触れられていなかった。

 喜納昌吉は、今も沖縄で現役のミュージシャンとして活躍している。民主党沖縄県連代表まで務めた元参院議員(比例区選出)・政治家としても知られる。内外でロングセラーとなった名曲「花~すべての人の心に花を~」の作者でもある。その昌吉の代表作を題材にした番組であるにもかかわらず、本人のコメントがないのはなぜなのか。

“変人”というレッテル

 喜納昌吉をよく知るマスコミ関係者はいう。

「びっくりしました。NHKは『名盤ドキュメント』という番組のなかで2017年9月24日に『ハイサイおじさん』を取り上げ、昌吉さんのロング・インタビューを放映したこともありますから、今回も本人インタビューはあるだろうと思って見ていたら、まるで無視された格好でした。実は沖縄のマスコミには、昌吉さんに“変人”というレッテルを貼って敬遠する人が少なくない。地元でのこうした昌吉評に影響された本土のマスコミ人もたくさんいます。昌吉さんは、俺が俺がと自己主張するタイプで面倒臭い人だと誤解されているようですが、実際には驚くほど目配りの利く、相手を尊重する人です。今回のNHKの番組スタッフも、誰かに吹き込まれたのか、昌吉さんを敬遠したんだと思います」

 たしかに、沖縄には喜納昌吉を煙たがる人、嫌う人は多い。ここぞという決定的な場面で、外されることも珍しくない。

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