卓球・平野早矢香が明かす五輪銀メダル秘話 敵を欺いた“前夜の賭け”(小林信也)

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 オリンピックの卓球で団体戦が採用された2008年北京五輪、日本女子は3位決定戦で韓国に敗れ、メダルに届かなかった。初めての五輪体験は平野早矢香に強烈な印象を刻んだ。

「オリンピックの代表に選ばれた瞬間からメディアの注目度がまったく違いました。普段の海外遠征はジャージや時には私服で移動していますが、オリンピックは渡航用の日本代表公式スーツがあり、他競技の選手と行動を共にしました」

 オリンピックのスケールの違いに平野は圧倒された。

「最初の試合、私はサーブを出す手の震えが止まりませんでした。1ゲーム目は最後まで震えていた。メダル決定戦の韓国戦に行くタクシーの中で、興奮と緊張と……、試合前なのに涙が出そうになった、経験したことのない異様なメンタル状況でした」

 オリンピックは、性格も含めて「自分のいいところも悪いところも全部出る」、怖さを思い知らされた。

 4年後のロンドン五輪、日本女子は平野(27)、福原愛(23)、石川佳純(19)の3選手で臨んだ。監督は村上恭和(54)。4年前、ヘッドコーチから監督に昇格。4年間で日本は世界ランキング2位に上昇していた。

 団体戦で日本は順当に勝ち上がり、準決勝のシンガポール戦に進んだ。勝てば初のメダルが確定する。ここまで日本のダブルスは、アメリカ戦が福原・石川、ドイツ戦が平野・福原。いずれも違うペアで戦った。村上は強敵を破るため、対戦相手によってオーダーを変えることを重視していた。

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