里見香奈五冠は初の女性棋士に黄色信号 先輩棋士は「1つ勝てば3勝することもある」

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 将棋の里見香奈・女流五冠(30)=清麗・女流王座・女流王位・女流王将・倉敷藤花=が女性初の棋士を目指す「棋士編入試験五番勝負」の第2局が9月22日、東京・千駄ヶ谷の将棋会館で行われ、132手で試験官の岡部怜央四段(23)に敗れた。8月に徳田拳士四段(24)に敗れた第1局から2連敗となり、編入試験に合格するためには、残る3局を全勝するしかなくなった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

AIの評価値は拮抗

 終局後、里見は「大事なところで間違えてしまい、仕方ない。次は自分の力を出し切れるように頑張りたい」と話した。岡部は「自分から局面を動かした。少し無理気味で難しさを感じた。最後、詰めろ(何もしなければ詰まされる局面。詰めろをかけられると、受けるか王手を続けるしかない。「必死」とか「必至」ともいう)が続きそうで勝ちがあると思った」と振り返った。

 対局は将棋会館で一番格の高い「特別対局室」で行われた。午前10時の開始で先手の里見は得意の中飛車を採用し、自玉を右側へ美濃囲いで囲った。居飛車の岡部は玉を盤の隅に囲う穴熊で応じた。

 持ち時間は各3時間。なかなか戦端が開かれず、中継するABEMAのAIの評価値は午後4時になっても50%ずつと拮抗する。岡部がおもむろに中央から重厚に攻めてきた。里見は見事な受けで冷静にしのいでゆく。攻め切らせてあとは穴熊の敵玉へ襲い掛かるだけに見えた。評価値もほぼ80%で里見優勢と出ていた。里見は敵陣の1段目に飛車を走らせて、ようやく攻めに転じる。

 だが一手で逆転するのが将棋の怖さだ。

 岡部が「6九」に打ち込んだ角への対応を誤ってしまった。「5八歩」で角筋を止めるべきところを、「2七」に金を打ち自玉の上部の銀を守ってしまった。AIの評価値は突然逆転し、岡部優勢を示した。岡部は猛攻を続ける。里見も粘ったが岡部の132手目「7七馬」を見て、将棋盤に手をかざして投了を告げた。もったいなかった。

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