里見香奈五冠は初の女性棋士に黄色信号 先輩棋士は「1つ勝てば3勝することもある」

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無念さを隠しきれない

 今回、ABEMAでは、奨励会で四段に昇段できず、現行制度の編入試験で棋士になった2人目の折田翔吾四段(32)と、8月の名人戦のA級順位戦で藤井聡太五冠(20)を破った菅井竜也八段(30)が交代で解説した。

 菅井は「よく準備していた里見さんが辛抱して、中盤からちょっとずつ優勢になっていた。自陣を強くする2七金は振り飛車党には打ちたくなってしまう手なんです。打たれた角で金が狙われてしまった」と残念がった。里見と同じく少数派の振り飛車党である菅井は「里見さんは人生を賭けて臨んでいる」と話していた。

 終局直後のインタビューでも、里見はすぐに「2七金が……」と口にしていた。敗着だと認識したのだろう。岡部との感想戦もそのあたりを中心にしていた里見は「うーん、うーん」と言葉は少なく、無念さを隠しきれない様子だった。折田は「痛い一敗ですが感想戦でしっかりと検討している里見さんの姿が印象的だった」とポツリ。さらに、「対局しましたがイナズマにやられていました」などと話していたが、菅井も折田も解説しながら内心、彼女を応援している様子が伝わった。

女性初の編入試験合格なるか

 将棋のプロには棋士と女流棋士がある。

 奨励会で四段に昇段して卒業するか、編入試験で合格することが条件である棋士には、これまで男性しかいない。現行制度の編入試験の受験者は、今泉健司五段(49)、折田に続いて里見が3人目の挑戦者だ。過去2人の受験者はいずれも合格している。今年になって横浜市のアマチュア強豪・小山怜央さん(29)=将棋講師=が、元奨励会員以外で初めて受験資格を得ている。

 島根県出雲市出身の里見は、日本将棋連盟の関西本部(大阪市)を拠点としている。女流タイトル通算49期(歴代トップ)と破格の活躍する一方で、女性として初めて奨励会三段まで昇段した。四段を目指して三段リーグに臨んだが、年齢制限の26歳までに昇段できなかった。しかし、女流棋士も参加できる公式戦で男性棋士たちを軒並み倒し、編入試験の受験資格を突破していた。

 終盤の鋭い攻めから「出雲のイナズマ」と呼ばれるが、本人は「自分はどちらかというと序中盤型かなと思っている」と話している(雑誌『将棋世界』2022年9月号のインタビュー)。男性棋士との公式戦成績は今年度、8勝7敗となっている。ちなみに、いつも眼鏡姿だったが、昨年、ICL(眼内コンタクトレンズ)の手術を受けたそうだ。

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