「ウーバー配達員」が手を染めた「女子高生」連続わいせつ事件 ビニール袋越しにキス、イソジンでうがいを強要の不気味

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「コロナをうつしたくなかった」

 都合の良い解釈で自らを正当化する藤野被告は、犯行の詳細に関しても、またBさんやCさんに対する事件についても、まるで被害者への配慮を行いながら“紳士的”に振る舞ったとでもいうような証言を繰り返した。

 たとえば、藤野被告は犯行時、被害者の1人にキスをする際、口と口の間にビニール袋を挟み、またある被害者の陰部にはアルコールスプレーを吹きかけ、イソジンでうがいをさせている。DNA型鑑定により捜査の手が及ぶことを案じたのか、または風俗店での“背徳感を伴う体験”を再現しようとしたのだろうか。こうした行為について藤野被告は、「コロナがあったので、私自身、陽性かどうかわからない。うつしたくなかった。陰部にアルコールスプレーをかけたのも、同じようにコロナがあったので……」などと、あくまでも被害者を慮っての行動だと繰り返した。

 さらに犯行時に手袋をつけていた点についても、「犯罪者はこういうものだという思い込みからつけていました」と述べ、脅すときに使用していたスタンガンやナイフは「犯行時はナイフはずっとしまっていました。スタンガンはわいせつ中に何度か手に取って放電した」と、体に当てていないことを強調し続けた。

 そのうえでBさんやCさんへの犯行についても、事前に何度もその姿を見かけたことをもって、「こんな偶然、これは何かの思し召しか、みたいに思った」「これはもう、この偶然を逃せない、という感情になりました」などと、全てを偶然、あるいは運命であるかのように語る。このときの藤野被告の声はひときわ大きくなっていた。

 一連の事件について検察官から「他人に対する思いやりよりも性欲を優先したことが原因なんじゃないですか?」と問い詰められるも、藤野被告は「そういった自分勝手であることが、性犯罪につながるというのは、また違うと思う」と反論。彼の中ではあくまでも、自分は“性嗜好障害”であり、通院すれば欲求は抑えられると考えているようだった。

断られた「被害弁償」

 検察官は9月6日の論告において「刑罰より治療を優先しなければならない理由はない」などとして懲役8年を求刑。弁護人は「次の被害者を出さないために立ち直らせることが必要」と治療の必要性を訴えた上で懲役4年が相当だと主張した。

 すべてを偶然や運命にしてしまう藤野被告は最終意見陳述でも車椅子に座ったまま、しかし、少し上を向き、裁判員の方を見ながら言った。

「最後にひとつだけ皆様にお願いがあります。裁判が終われば、過去の記録としてこの事件が埋もれてしまいます。しかし、私がやったことは消えるわけではありません。時折、どうか思い出してください。言霊、という言葉がありますが、被害者に届いて、少しでも救われて欲しい。心から願っています」

 何を言いたいのかよくわからない最終意見陳述を述べた藤野被告は、AさんやBさん、Cさんに対して被害弁償の申し出をしたというが、全て断られている。弁償のための金は、父が用立てていた。さらに前刑では被害弁償を被害者が受け入れてくれたが、この時に父が出した130万円は返済していない。

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