シャブは止められないのか!? 「組長の娘」が証言する常用者の実態

芸能2016年12月6日掲載

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 歌手のASKAが再び覚せい剤使用の容疑で逮捕された。女優酒井法子さんの元夫、高相祐一容疑者も先日、危険ドラッグを所持しているとして逮捕されている。高相容疑者の逮捕は3回目だ。田代まさしも覚せい剤など薬物にからむ事件で、度々世間を騒がせたことは記憶に新しい。悪いとわかっていながら、薬物を再び使用する人が後を絶たないのはなぜだろうか。

 気鋭の犯罪社会学者、廣末登氏の近著『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』はシャブ常習者の悲哀を生々しく綴っている。同書は、中川茂代さん(仮名)という関西のヤクザの家に育った女性の人生を聞き取りしたドキュメント。

18歳で覚せい剤

 主人公の中川さんは、十代で覚せい剤を使用する。

「段々と深みにはまっていったんは18歳くらいの時期からやな。何の深みかいうたら、薬物やねん。シャブ打ったり(この頃は、まだまだタマポンやで。ツネポンちゃうから)、大麻やったりしよってん。まあ、周りがやりよるから、初めは軽い気持ちからや。せやかて、一度味覚えたら、猫にマタタビやったな。抜けられやせん」

「ツネポン」とは覚せい剤の常習者を指し、「タマポン」は覚せい剤をたまに用いる者のことを指すアウトロー用語だそうだ。

ツネポンの悪夢

 しかし、そんな中川さんも、次第に覚せい剤の深みにはまり、覚せい剤営利目的有償譲渡・使用で逮捕され、4年半を刑務所で過ごすことに。初めは興味本位で始めた覚せい剤が、彼女の人生から、夫や子ども、社会的信用まで、何もかも全てを奪うこととなった。

 覚せい剤常習者となった当時の模様を、中川さんは次のように回想する。

「シャブ屋してるから、カネには困らんやってんな。当時は、1g(ワンジー)で7万円位になってたしな。しゃあかて、常にビクビクしとったな。(略)誰見てもポリに見えんねん。その頃は、もうドロドロや。ポン中(覚せい剤中毒者)しか分からんことやけどな、この時期、うちは血管が潰れてしもうて針が入らんようになってたんや。腕だけやなく、脚の血管からも入れたもんや。どうしようもない時は、ウオーリー(仮名)いう専属の女の針師(覚せい剤の注射を補助することで報酬を得る者)を呼んで入れてもらいよったんやが、サウナ入って血管出しても針が入らんときあんねん。もう血みどろになるんやがな、それでもクスリ入れたいねん。どないするかいうとな、注射器に逆流した血みどろの液を冷凍して備蓄しておくんや。で、注射器の針をバーナーで炙って、先を丸くしてから、解凍したクスリを、ケツの穴から注入するしか手がないんや。ここまで来たら、シャブ中もかなりの筋金入りや」

被害者無き犯罪という甘えが再犯を生むのか

 刑務所を出所すると、彼女を頼ってかつての刑務所仲間が次々に訪ねてくる。しかし一度覚せい剤で服役した者は、なかなか更生できないようだ。

 その理由を中川さんはこう分析している。

「女子の大学(刑務所)はシャブ関係が最も多いな(こいつらは、あまり反省の色がないんが特徴や。パクられたんは運がなかったんや、まあ、他人には迷惑かけてへんからな……そうした言い訳かまして、虫わかしてるん[再び覚せい剤を使用したいという思いを募らせている人]が多い)」

 つまり、はっきりした「被害者」が存在していない分、罪の意識が薄いというのだ。しかし、実際には当然のことながら家族や周囲には多大な迷惑をかけている。

 肉親や近隣社会に助けられ更生した中川さんは、再び薬物に手を出さないと誓った。そして、自らの経験を生かし、覚せい剤で身を持ち崩した人の更生を助けようと頑張っている。だが、そうした努力も空しく、仮釈放中に再び覚せい剤に手を出し、刑務所に引き戻されてゆく者が多いという。

「なしてうちの周りには、こんな人間ばかりなん……嘆きが悲しみに、怒りが虚しさに変わってゆく。考えれば、やはりうちのような人間に寄ってくるのは、うちが悪いからやないか、これぞ、『類は友を呼ぶ』いうもんやないか。自分の過去の愚行の数々が骨身にしみた」

「やっぱ、みんなちゃんとしたいねん。ちゃんと生きていきたいねん。ホンマは。根本は、せやねん。もう、もっかい(もう一回)人生やり直せるのやったら、もっかい頑張ってやり直そう、みんな、そう思うてる。絶対に……でも、やっぱり出来へんねん」

 覚せい剤で全てを失った経験を持ち、覚せい剤中毒者などの更生に寄り添い、伴走支援する中川さんだけに、その言葉は重い。

女子は増加傾向

『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』の著書である廣末登氏は、次のように警鐘を鳴らす。

「厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課が、平成27年11月に発表した薬物事犯の報告書によると、覚せい剤使用者自体は減少傾向にあります。しかし、再犯者は平成22年から26年まで、おおよそ56%で推移しており、覚せい剤の依存性の高さを示しています。

 さらに、平成25年版の犯罪白書を見ると、平成24年の女子の特別法犯の送致人員のなかでは、覚せい剤取締法違反の割合が22.1%と最も高くなっています。女子の覚せい剤取締法違反による入所受刑者数も、平成5年以降右肩上がりになっている。これらの多くは再犯者と思われます。彼女たちが再び覚せい剤に手を染めたのはなぜなのか、明確な理由は分かりませんが、一度刑務所に収容された人に対し、セカンドチャンスを与えない硬直した世相も反映しているのではないかと思います。だから「……でも、やっぱり出来へんねん」となるわけですね。

 私の研究は、暴力団を離脱した方の社会復帰についてですが、日本では、一度、そうした負の経験をした方をなかなか受け入れてくれません。いわゆる社会的排除が生じている。しかし、そうすると極道の道からも外れた、新たな「悪い人たち」が生まれるだけなのです。覚せい剤は元手が少なく、儲けが大きい。狙われるのは社会的弱者である女性や子どもたちなのです」

 罪を犯した以上、社会的制裁も含めて罰を受けるのは当然だろう。しかし、「やり直したい」という気持ちを維持させることで、更生をすすめ、再犯を減らすためにはどうすべきか、「社会全体で真剣に考える時期が来ている」と廣末氏は語っている。

デイリー新潮編集部