カスハラの7割以上が男性、年代は中高年が大半 コロナ禍で急増した原因は?

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要因の一つは「世の中が豊かになったこと」

 池内氏は、カスハラが起きる社会的要因の一つとして「世の中が豊かになったこと」を挙げる。

「1960年代の高度経済成長期まで、日本では『作れば売れた時代』でした。しかし、世の中にモノが溢れてくるようになると、その勢いは徐々に失速。顧客獲得のため、競合他社に負けぬようマーケティングを行い、顧客のニーズに合わせた商品やサービスを提供するように。その結果、顧客優位の買い手市場が構築されました」

 こうして企業は顧客満足度獲得のため、常に新たな商品やサービスを生み出そうとするのだが、皮肉なことにそれがまた新たなクレームを生み、現場を疲弊させる原因にもなる。

「物流業界では、コロナ禍に非接触型の配達方法である『置き配』が導入されました。EC(ネット商取引)需要の急増や、世間の『感染防止対策』における要望として始めたサービスでしたが、“置き方が悪い”“荷物のせいでドアが開かなかった”“荷物を盗られた”といった今までになかったクレームが発生。良かれと思って始めたサービスが、結局自分たちの首を絞めることにつながっている」(池内氏)

 このような消費者の地位向上と権利意識の高まりは、消費者保護のための環境が段階的に構築されたことにも起因するという。

「近年では95年の製造物責任法(PL法)の施行や、2004年の消費者基本法の制定、さらには09年の消費者庁の設置などがそれにあたる。これらによって消費者側が権利を主張しやすくなり、過剰な要求や暴言を吐くなどの言動が増えたといえるでしょう」

迷惑行為の7割以上が男性

 先のゼンセン調査では、迷惑行為をしていた客のうち74.8%が男性。推定年代では、50代が30.8%、60代が28.0%、70代以上が11.5%と、中高年が7割を占める。10代の0.2%、20代の2.0%と比べると、その傾向は顕著だ。池内氏は、この要因に「筋論(すじろん)クレーマー」の存在を指摘する。

「カスハラは、客が上から目線で“指導”したつもりの時に起きることがあります。社会的地位が高く財力のある中高年の男性は、このケースに該当しやすい。聞いてもいないのに自分の地位をひけらかし、“自分は○○(企業名)で営業部長をしていたが、オマエのところの商品はなんだ”と指導という名のクレームをするのが目立ちます」

 とりわけ高齢者の場合、定年退職してもまだまだ自分は元気で社会とつながっていたい、社会のために貢献したい、という思いが強く、筋論クレーマーに転じてしまうことがあるという。

 また高齢者は、この筋論クレーマーとは別に、社会の利便性から取り残されたゆえに起こる「ストレス発散型クレーマー」になるケースも少なくない。

「このコロナ禍で世の中は一気にデジタル化。感染防止対策や人件費削減として電子マネー、セルフレジなど、さまざまな業界でIT化が進みました。しかし、これらの新しいサービスを使いこなせない情報弱者にとって、世の中の急な変化はいら立ちのタネになる」

 こうしてたまったいら立ちを向けられるのが、店に立つ店員となる。実際、ゼンセンの調査においても、回答者の約3人に1人(33.1%)が、ストレスのはけ口にされていると答えているのだ。

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