カスハラの7割以上が男性、年代は中高年が大半 コロナ禍で急増した原因は?

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深刻化が進む物流業界

 これまで「頭脳労働」と「肉体労働」に大別されていた“労働”の概念に加えて、近年新たな概念として注目され始めているのが「感情労働」だ。自身の感情をコントロールすることで相手の期待に応え、報酬につなげる労働のことで、スーパーなどの店員、ホテルスタッフ、キャビンアテンダントなどの接客を伴うサービス業のほか、医療、介護、教育に携わる職業など、「人」とのコミュニケーションを要する業界周辺が大きくこれに該当する。

 しかし「顧客至上主義」の風潮が出始めると、あらゆる業界でサービスの質向上が求められるようになり、この感情労働を強いられる労働者は増えつつある。

 そんな中でもカスハラが深刻化しているのが物流現場だ。運ぶ過程が客に見えず、サービスもカタチに残らないため、トラックドライバーたちの仕事は総じて軽視されやすい。

「ろくに勉強もしてないからトラックドライバーなんかやってるんだろ」

 かつて工場を経営し、トラックで日本各地を回っていた筆者のもとには、毎日のように現場の窮状を訴える知らせが届く。

 宅配を担う配達業者たちからは、

「17~19時の時間帯指定の荷物を17時に届けに行ったら“なんでこんなに早く来るんだ、この時間帯指定なら18時以降に来るのが常識だろ”と罵倒された」

「“子どもがようやく寝たところでベルを鳴らされ起きた”という苦情が入った」

「夏のクール便では、外気温との差で生じた表面の水滴を見て“溶けているじゃないか”と、執拗に返品を主張された」

 という声。企業間輸送をするトラックドライバーたちからも、

「荷主先で“ろくに勉強もしてないからトラックドライバーなんかやってるんだろ”と罵倒された」

「燃料代の高騰でサーチャージ制の導入を打診したところ“代わり(の運送業者)なら他にいくらでもいる”と脅された」

「中身が無傷でも、梱包材の段ボールに少しでも傷が付いていたら弁償。中には弁償しても商品を返してもらえないケースもある」

 といった苦悩がひっきりなしに聞こえてくる。

 カスハラはなぜ起きるのか。同問題を研究する関西大学社会学部の池内裕美教授に心理的・社会的要因と、カスハラ対策を聞いた。

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