なぜ米空軍の訓練で「100年前の中国の地図」が使われる? 習近平の妄執の背景にある「国恥地図」

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 台湾を巡って米中間の緊張が高まっている。そうした中、米空軍の教育訓練では、約100年前の中国地図が使用されたという。軍事衛星もある時代に、なぜそんな古いモノを使うのか。実は、この地図には習近平政権の意図を読み解く鍵が隠されているのだ。【譚 ろ美/作家】

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 台湾海峡やアジア太平洋地域の安全を脅かす中国を前に、警戒感が高まっている。きっかけは、8月2日、中国が強く反対したにもかかわらず、アジア歴訪中のペロシ米下院議長率いるアメリカの議員団が、電撃的に台湾を訪問したことだ。翌日、ペロシ下院議長は蔡英文総統と会談し、「世界は今、民主主義と専制主義のどちらを選ぶのか迫られている。台湾と世界の民主主義を守るためのアメリカの決意は揺らぐことはない」と述べた。

 台湾を中国の一部だとみなす中国は、報復措置として4日から10日まで、台湾を包囲する六つの海空域で史上最大規模の軍事演習を実施した。中国軍は最初の4日間だけで、のべ41隻の艦船と176機の軍用機を出動させ、そのうち100機以上が台湾海峡の非公式の休戦ラインである「中間線」を越えて台湾本島に迫った。

 また、中国軍は初日に11発の弾道ミサイルを発射し、このうち4発が台湾の上空を越えて東側の海に着弾したほか、5発が日本のEEZ(排他的経済水域)に着弾した。日本政府は中国側に抗議したが、中国外務省は「日中両国は関連の海域で境界をまだ確定しておらず、日本のEEZという言い分は存在しない」と主張した。

台湾周辺での軍事演習が常態化か

 火に油を注いだのは14日、マーキー米上院議員ら5人のアメリカ議員団が事前発表なしに訪台し、15日に蔡英文総統と会談したことだ。

 案の定、中国軍は同日、再び台湾周辺で軍事演習を実施した。中国国防省も声明を発表し、「台湾海峡の平和と安定の破壊者としての米国の本性が完全に露呈した」として、「中国人民解放軍は戦争に向けた訓練と準備を続け、国家主権と領土の一体性を断固として守り、いかなる形の台湾独立分離主義と外国の干渉も断固として粉砕する」と表明。今後、台湾周辺での軍事演習が常態化するのではないかと懸念されている。

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