なぜ米空軍の訓練で「100年前の中国の地図」が使われる? 習近平の妄執の背景にある「国恥地図」

国際 中国

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米国の態度も変化

 今後、中国の海洋進出に対抗して、アメリカが主導するインド太平洋戦略における最も重要なカギとなるのが「台湾侵攻」を食い止められるかどうかだ。

 たとえば、昨年12月8日、米国上院外交委の台湾問題に関する公聴会で、インド太平洋安全保障担当のラトナー国防次官補は、「台湾は米国の同盟ネットワークの極めて重要な結節点だ」と述べた。

「なぜなら台湾は第1列島線における極めて重要な結節点に位置し、インド太平洋地域における安全保障と米国の死活的利益の防衛に極めて重要な同盟国・パートナー網の錨(アンカー)となって支えている」として、台湾を守るために、軍事的威圧を続ける中国を最も警戒しなければならないと強調した。

 これまで米国は「一つの中国」政策をあいまいに支持してきたが、緊迫した国際情勢の下で、政策解釈の上で大きな変化が生じたことは明らかだ。

米軍が93年前の地図を訓練で使用

 そうした中、米空軍基地の訓練機関で93年前に中国で使われていた「国恥地図」を教材に使用していることがわかった。

 国恥地図については、後で詳しく触れるが、「産経新聞」(2021年12月6日付)の報道によれば、テキサス州グッドフェロー空軍基地に所属する教育訓練機関が訓練風景を公開した数枚の写真の中に、偵察・情報担当の教官が「国恥地図」をもとに講義する様子が写っていた。記事では、詳細は不明だがと断わりがあるが、教官が国恥地図を指しながら、台湾や中国大陸の沿岸部を青い蛍光ペンで囲んで、何ごとかを説明している。

 米軍なら高度な技術や精密な衛星画像を駆使して最新地図を得られるだろうに、なぜそんな古い地図を使っているのか。実は、この地図は単なる地形図ではない。いわく因縁付きの代物なのだ。

 この報道より約2カ月前、私は『中国「国恥地図」の謎を解く』(新潮新書)を出版した。国恥地図が作られた歴史的経緯や製作過程を調査し、今日でも中国が愛国主義教育の教材として使っているという事実を突き止めた。

 また、現存する約20種類の国恥地図の中から、代表的な5種類を取り上げて分析したのだが、その5種類の中に、米軍が使用している国恥地図と同一のものが含まれていたのである。

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