妻は「ホスト依存症」で借金400万円、それでも離婚しない夫の“負い目”とは

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“女友だち”との出会いに救われた淳一郎さん

 一方、淳一郎さんは妻の借金を払ったあと、自分の結婚生活は何だったのかと考え続けた。母にも言えず、友人にも言えない。病気のため飲酒もできなかったのでストレスを発散させる場もなかった。

「姉と妹に囲まれた子ども時代を過ごしたので、僕はどこか女性が怖いんですよね。うちが特殊だったのかもしれないけど、姉と妹は本当に強くて。姉にはよくプロレスの技をかけられて泣いていたし、妹には小遣いを巻き上げられていました。今でもふたりに会うと、身体が緊張してしまうくらい。子ども時代のことを、ふたりは笑い話にしていますが、実は僕の性格を形成する上で、あのふたりの悪影響は大きかったと思っています。女性にビビって率直にものを言うことができないという……」

 だから妻にもビシッとは言えなかった。「オレってやつは」と自分を情けなく思っていたとき、大学時代のサークルの友人である比佐子さんに都内のターミナル駅近くでばったり会った。

「歩道橋の上で会ったんですよ。そんなことってあるんですね。仕事で急いでいたので、とりあえず名刺交換だけして別れたものの、会社に戻ってからすぐメールしました。彼女のほうも会社にいたようで、返事が来て。お互いにプライベートの連絡先を教えあいました」

 彼も比佐子さんも、このコロナ禍で仕事の時間が不規則になっていた。翌日の予定を聞くと、在宅ワークの日だが午前中は出社するという。彼も会議のため午前中は出社だった。そのまま社内で仕事をするつもりだったが、午後から急遽、外回りに切り替え、比佐子さんに会う約束をとりつけた。

「午後から本当に取引先を2件ほど回って午後3時、約束のカフェに行きました。何が目的というわけでもなく、ただ懐かしくて会いたかった。彼女も同じだと思います。学生時代の話とか今の生活とか、ふたりともしゃべりまくって気づいたら夜になっていた。また会おうねと別れました。恋したわけではないけど、利害関係なく話せる友人がいるのはうれしかった」

 投薬のおかげで糖尿病は落ち着いていたが、彼にはすでに性欲がなかった。だからこそ、“女友だち”の存在は重要だったのかもしれない。比佐子さんは彼が緊張せずに話せる、貴重な相手だったのだ。

「私に隠していること、ない?」

 それ以来、ときどき比佐子さんに会うようになった。数回会ったとき、比佐子さんは「私、実は不倫してるんだ」と気軽に言った。それを聞いて、彼は「実はうちの妻が」とホストにはまったことを話した。お互いに誰にも言えないことを話せる関係になったのがうれしかったと彼は言う。

「僕自身、ストレスをためずにいられる環境ができたのはありがたかった。だけど妻はあるとき何かを感じたのか、『私に隠していること、ない?』と言い出しました。まったく罪悪感などなかったから、『いや、何もないよ』と返したんですが、あれは裏を返せば妻自身が、またもホストにはまっていったことを僕に気づいてほしかったのかもしれないと、あとになってから思いました」

 自分の行動に気づいてほしいからこそ、相手を疑るような言動をとる。不倫をしている人にはときどき見られるケースだ。こういう人は、内心、とても寂しいのではないかと個人的には思う。

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