アフリカでヤクザが中国マフィアとタッグを組んでやっていた違法ビジネス 元公安警察官の証言

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、日本の暴力団と中国マフィアの違法ビジネスについて聞いた。

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「私はかつて警視庁から外務省に出向し、アフリカのある国の大使館に外交官として赴任していたことがあります。その時に起きた事件についてお話しします」

 と語るのは、勝丸氏。

「2008年頃、現地の海岸で、背ビレや尾ビレのないサメが何匹も打ち上げられました。ビクビクと震える、まだ生きているサメもいました」

暴力団の紋章入り名刺

 アフリカ人にはサメを食べる習慣がないし、誰がこんな殺し方をするのか住民は困惑していたという。

「住人が警察へ通報しました。その後、警察は捜査員を動員して沿岸を監視しました」

 警察はアフリカ人がサメを密漁している現場を取り押さえた。

「密猟者を事情聴取すると、中国の上海系マフィアから雇われたと自白したそうです。密猟者は、捕獲したサメのヒレだけ取って海に投げ捨てていました。つまり彼らはフカヒレの密漁をしていたのですね。その国には上海系マフィアのアジトがあったので、警察はすぐにガサ入れし、中国人を逮捕。そして、パソコンや資料を押収したそうです」

 すると、今度は警察から勝丸氏へ連絡が入った。

「『押収したパソコンや資料には、日本語のような文字があるが、判読できないので見てくれないか』と依頼されたのです」

 勝丸氏は、すぐに警察へ向かった。

「日頃から情報収集のために、現地の警察関係者を高級レストランで接待して、親しくしていましたから、何か日本と関係のありそうな事件があると知らせてくれるのです。押収した資料の中から、日本の某広域暴力団の紋章入り名刺が出てきました。その広域暴力団のフロント企業の資料もありました」

 警察は、上海系マフィアの通話記録も入手していた。

「その中に、アフリカから東京への通話記録がありました。捜査を進めて行くと、フカヒレの密漁に関わっていたのは、上海系マフィアの他に広東系マフィア、香港系マフィア、それに日本の暴力団で、かなり大規模な密漁組織だったことが判明しました。フカヒレは香港へ密輸され、フカヒレスープになっていました。香港には、広域暴力団のフロント企業もありました」

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