ロシア「お膳立て」取材ツアーに唯一参加した日本人ジャーナリストが見たものとは

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“ドネツク人民共和国”の首長は将来的なロシア編入を示唆

 南部の町メリトポリに向かう車窓からは、たくさんの風車が見える。どこまでも一面の小麦畑が広がり、大地の豊かさを実感した。それを過ぎると今度はさくらんぼ農園に着いた。これからがちょうど収穫の時期で、木から直接もいで食べると、モスクワで売っているものとは別格のおいしさだ。農園の主人がプレゼントしてくれた箱いっぱいのさくらんぼを抱えつつ市内に到着した。

 中心部の勝利広場ではバラが咲き乱れており、噴水とのコントラストが美しいが、大型ホテルは休業したままだ。メリトポリ市民へのロシアのパスポート発給手続きは1カ月先まで予約で埋まっている。発給希望者の主な動機は生活レベルを上げたいというものだ。

 ドンバスでも経済面でのロシアへの期待は大きい。ドネツク人民共和国のデニス・プシーリン首長は共和国が将来的にロシアに入る可能性を問われ「もちろん住民の意見を聞かなければならないが、先回りして言えば、私はそれを知っている。2014年からそれは変わっていないだけでなく、強化された」と話した。

敗走するウクライナ兵の武器と食料を交換した

 マリウポリなど長期戦を経験した町がある一方で、ルガンスク近郊の小さな町シャスチエは、軍事作戦開始後、非常に早い段階で「解放」、つまりはルガンスク人民共和国の支配下へ入った。かつてウクライナ中隊の本部だった場所で記者団に公開されたのは、アメリカがウクライナに提供した「ジャベリン」の一部など、NATO諸国の武器だ。イギリスからウクライナに供与された携行式対戦車ミサイル「NLAW」もあった。

 ルガンスク人民警察のイーゴリ・フィリポネンコ大尉は「補給ルートから切り離されたウクライナ兵は武器を差し出し、我々の食料と交換するしかなかった」と言う。NLAWが手に入った経緯については「元々バッテリーに問題があったからだと思うが、その辺に捨ててあった。我々が修理して使った」と説明した。

文・撮影 徳山あすか

週刊新潮 2022年6月30日号掲載

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