アンモニアを燃料にして火力発電所を脱炭素化する――小野田 聡(JERA代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】

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なぜアンモニアなのか

佐藤 それが水素やアンモニアですね。

小野田 オイルショックを経験して、燃料を石油から天然ガスや原子力に替えてきたように、化石燃料がダメなら、水素やアンモニアのように燃やしても二酸化炭素が出ない燃料に替えていけばいいのです。

佐藤 既存の火力発電所の施設でできるのですか。

小野田 いまある火力発電の設備のバーナーを改造し、アンモニアのタンクと気化器を付ければ、燃料の20%をアンモニアとして燃やし、そのまま発電することができます。発電量を変えることなく、二酸化炭素を削減できます。

佐藤 技術的にはほとんど確立されているのですね。するといまの課題はどこにあるのですか。

小野田 アンモニアの量を確保することです。国内で使われているアンモニアは肥料用など、年間100万トンほどです。これを発電用に使うとなると、100万キロワットの石炭火力に20%混焼させるだけで年間約50万トンが必要になります。ですから石炭火力2基だけで、いまの年間使用量に達してしまう。日本全体の石炭火力で燃やしていくためには、年間数千万トンの量が必要ですから、アンモニアを製造する段階から関わっていかないと、その量を確保できません。

佐藤 それは巨大なプロジェクトになりますね。

小野田 LNGでは開発、調達、輸送、受け入れ、発電と、上流から下流まですべて弊社がやっています。そのサプライチェーン全体に関わってきたノウハウが、そのままアンモニアにも活用できると考えています。また、LNGなどで一緒に事業をしてきた会社もたくさんあります。

佐藤 世界的なサプライチェーンを作るわけですね。

小野田 例えば、ノルウェーの肥料メーカーで、ヤラ・インターナショナルという世界最大のアンモニア製造会社があります。ここと協業の話を進めていますし、アラブ首長国連邦のアブダビ国営石油会社、マレーシアのペトロナスという国営企業とも話をしています。その他にもさまざまな会社と協業に向けた検討を進めていて、さらにアンモニア調達に向けた国際入札を行っています。

佐藤 アンモニアは輸送がしやすいと聞きました。

小野田 その通りです。もともとは化石燃料の代替として水素が注目されていました。水素は、パイプラインがあるような近距離で地産地消型の場所なら可能性がありますが、島国である日本では難しい。大量の水素を運ぶには液化する必要があり、そのためにはマイナス253度まで冷やさなければならない。LNGはマイナス162度、アンモニアはマイナス33度ほどです。

佐藤 つまりアンモニアが一番簡単に液化できる。

小野田 アンモニアに少し熱を加えると水素が出てきますから、水素の原料としても使えます。そのアンモニア自体も火力発電の燃料として使用しようというのが、燃やしても二酸化炭素を出さない火力、私どもが進めているゼロエミッション火力です。

佐藤 アンモニアは毒物でもありますから、扱いが大変ではないですか。

小野田 もともと火力発電所では、窒素酸化物を除去する脱硝装置にアンモニアを使っており、長年培った、アンモニアを取り扱うためのノウハウがあります。

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