「高級ステーキ」が自販機で買える? 驚異の技術革新の実態に迫る

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まさかショートケーキまで…

 考えてみれば、これまでも和風ダシなど一風変わった自販機があるにはあった。でもまさか、ショートケーキまで買えるなんて……。

 墨田区・押上駅から歩いて約3分。見つけたのがケーキ缶の自販機だ。一番人気の「ショートケーキ缶」を買ってみる。上部のプルタブをパカッと開ければ、北海道産の生クリームと新鮮なイチゴ、スポンジケーキなどが層になってぎゅっと詰まっている。

 スプーンで食べると、優しい甘さのクリームとスポンジが絶妙なバランス。透明缶なので断面が見えてかわいい。

 考案したのは、北海道や東京などで夜パフェ専門店などを運営する「GAKU(ガク)」(北海道・札幌市)のオーナー、橋本学さん。

 昨年6月に店頭販売を始めるとSNSで話題になり、瞬く間に人気に火が付いた。自販機の設置は7月の札幌が最初で、1日500個売れたことも。現在は期間限定も含め都内3カ所、北海道2カ所、大阪2か所の計7カ所に置いている。

 同社広報によると、

「ケーキは崩れやすくて持ち運びにくい。その負の部分を排除したらどんなものができるだろうという思いが出発点です。パティスリーの味を24時間いつでも楽しんでほしいと自販機販売を始めました。缶でもケーキを食べているイメージが伝わるよう、断面をいかにきれいに見せるか、組み立ても工夫しています」

 缶ジュース感覚で、カバンにポンッと入れてケーキを持ち運べるとは、時代も変わったもんだ。

 従来のイメージを一変させつつある数々の自販機。現在のブームの根底にあるのは「より本格的なクオリティーのものをいつでも手に入れたい」という消費者の利便性を追求した結果だろう。苦境にあえぐ飲食店の起死回生策として期待されるだけでなく、副業や空きスペースの活用ビジネスとしても注目されている。

 ライバルはコンビニ。だとすると今後、当たり前のように街の自販機で何でも手に入る時代が訪れる?

肥田木奈々(ひだきなな)
ライター。大分県生まれ。「大分合同新聞社」本社・社会部記者、同東京支社記者を経てフリーランスに。食に関連する記事を中心に雑誌・新聞等で執筆中。お酒とおいしいものをこよなく愛する食いしん坊&のんべえライター。本誌カラーグラビア「記念日の晩餐」も担当。

週刊新潮 2022年6月9日号掲載

特別読物「有名店のラーメンを再現 『高級ステーキ』から『ケジャン』『キャビア』まで コロナ禍で進化した『自販機大国日本』」より

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