「高級ステーキ」が自販機で買える? 驚異の技術革新の実態に迫る

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販売前の試食を徹底

 店があるのは以前、生花店だったスペースで、横長のためか入居者がなかなか決まらなかった。ところが、その形状が逆に自販機の配置にピッタリだった。店員は不要なので、主な経費は商品の仕入れ代と家賃、電気代だけ。後は自販機が文句も言わず(当たり前か)、せっせと休みなく働いてくれるのだから、空きスペース活用ビジネスとして着手しやすい。

 とはいえ、店舗の雰囲気作りや取り扱う商品選びには苦労したそうだ。

「徹底したのは販売前の試食です。味を試してみて、納得したものだけを随時入れ替えて販売しています。夜中でも安心して利用できるよう、BGMに明るい音楽をかけたり、手書きのポップで商品を紹介するなど工夫しました」

 高速道路のサービスエリアには食品自販機コーナーがあり、地方に行けばうどんやそばなどのレトロな自販機を並べた名物的なスポットがあったりする。だが、それらは昔ながらの“昭和の自販機”がほとんどで、必ずしも味を重視したものではない。飲食店の料理や高級食材など令和の自販機を集めた店舗は都心で例がなく、商売として成り立つのか最初は半信半疑の食品メーカーもあったという。

業界の救世主「ど冷えもん」とは

 それが今では商品を扱ってほしいという企業や、同じような自販機の店を始めたいと考える一般の人からの問い合わせもある。

「今後は直営のほかにフランチャイズ展開も進め、地方の駐車場やロードサイドにも出店したい」

 すでに歌舞伎町のボウリング場にもキャビアの自販機コーナーを開設。北海道や愛知など各地でも出店の話が進んでいるそうだ。

 さて「PiPPoN!」でも導入しているのが「サンデン・リテールシステム」(東京・墨田区)の冷凍自販機「ど冷(ひ)えもん」。

 昨年1月末に販売開始して以来、全国で設置が急増中の自販機だ。飲食店にとっては営業時間外でも自社商品を販売でき、人件費などコスト削減や売り上げ拡大も見込める。コロナ禍で休業や時短を余儀なくされた業界の救世主との呼び声も高い。

 高級弁当の宅配などの中食事業を展開する「Cqree(シークリー)」(東京・品川区)も、需要を見込んで昨年8月から代理店販売を始めた。その人気のほどを取締役の塚口直信さんが明かすには、

「これまでの設置は全体で2千台ともいわれますが、うちだけでも数カ月で約150台を手がけています。9月までには計300台に達する見込みです」

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