同調圧力でマスク着用を続ける日本人 高齢者にリスクとの指摘も…酸素濃度の低い空気が招く病気とは

ドクター新潮 健康 その他

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 気付けば日本は完全に後れをとっていた。マスクの話である。元来がマスクに抵抗がない日本だが、欧米などはとっくに着用義務を大きく緩和している。マスクをしているほうが安心だと思うなかれ。実は、マスクには大人にも子供にも甚大な副作用があったのだ。

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 気温が上昇する日が多くなり、マスクをしていると息苦しい。そう感じることも増えたのではないだろうか。そんな折、5月20日に後藤茂之厚生労働相が閣議後の記者会見で、マスク着用について政府の新たな考え方を発表した。

 いわく、基本的な感染対策として、マスク着用の位置付けは変えないが、屋外では、周囲との距離が2メートル以上確保できていなくても、ほとんど会話をしないならマスクを着用しなくてもいい、とした。たとえば、徒歩での通勤や人とすれ違うときだという。

 また、屋内で会話するときでも、十分な換気などの対策がとれていれば、マスクを外すこともでき、小学校就学前の2歳以上の子供には、着用を一律に求めないとした。

同調圧力でマスクをする日本人

 ひところにくらべれば、政府は解除に向けてかなり踏み込んだ、といえないこともない。ところが現実には、外に出てもマスクをせずに歩いている人は、その後もせいぜい微増した程度で、ほとんど増えていないともいえる。

「私は肺が悪く、マスクをすると苦しかったので、これで楽になると思いホッとしたんです。ところがマスクを外して買い物に行くと、ほかに外している人が誰もいないので、結局、すぐにマスクをしました」

 50代の女性の話だが、似たような経験をした人は多いのではないだろうか。東京大学名誉教授で食の信頼向上をめざす会代表の唐木英明氏が指摘する。

「欧米の人は、できればマスクを着けたくなかったものの、政府が罰則つきで強制したから、仕方なく着けた。だから着ける必要はないと言われれば、すぐに着けなくなりますが、日本人はもともとマスクに抵抗がありません。コロナの薬やワクチンがなかったころから、いわばお守り代わりに着け続けることを選び、マスクを外していると白い目で見られ、マスク警察が出動する状況を生んでいます。つまり、多くの人が同調圧力のせいでマスクをしているのが現実で、政府がマスク神話を積極的に緩和しないかぎり、なかなか外せないと思います」

 要は、政府が諸外国以上に踏み込んで、マスクを外していいと言わないかぎり、日本人はマスクを外しにくい、ということだろう。ところが、日本政府のマスク着用に関する考え方は、諸外国とくらべて圧倒的に保守的なのである。

各国で着用義務を撤廃

 アメリカでは、マスク着用への対応は州ごとに違ったが、3月下旬までにすべての州で、屋内でのマスク着用義務が撤廃された。

 イギリスでは早くも1月19日、公共施設でのマスク着用やワクチン接種証明の提示を義務付けたコロナ対策「プランB」を「27日に終了する」と、ジョンソン首相が発表。それを受けてジャヴィド保健相が「新型コロナや新たな変異株は撲滅できないので、インフルエンザと同じように付き合っていく必要がある」と補っている。

 比較的保守的なフランスも、5月11日にベラン保健相が「公共交通機関でのマスク着用義務を16日に解除する」と発表。その際、保健相は「感染状況は改善しており、パンデミックは終わっていないが、マスク着用義務は現状に合っていない」と説明した。ちなみに屋内での着用義務は、とっくに解除されていた。

 実は、欧米だけではない。インドネシア政府は「感染拡大が収まってきた」として、5月18日から屋外での着用義務を解除した。

 お隣の韓国も、5月2日に屋外での着用義務を解き、それに先立って金富謙(キムブギョム)首相が「散歩や家族旅行でもマスクを外せない国民の不便解消が必要」だとし、諸外国の例を挙げて「オミクロン株の感染ピーク後にマスクを外しても、減少傾向は続いている」と説明した。

 かたや日本は、いまなお屋外でさえ着用しなくていい状況は限定的で、そもそも、解除するにせよ、しないにせよ、それが現在の感染状況をどう判断してのことなのか、具体的な説明はなにひとつないのである。

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