SNSに偽りの自分を投稿してしまう! “だてマスク”が手放せない! これって病気?

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 このような光景をよく見る。

 ワイドショーの司会者がゲストの精神科医に「政治家の言動」や「大人気のキャラクター」などについて“分析”をお願いし、精神科医が専門知識に則りあいまいながらも言葉に気を付け「この人は相当不安が強いですね。だからそれを隠すために断定口調でまくし立てているのです」などと答える。すると司会者は「それにあえて病名をつけるとすると」と食い下がる。精神科医は苦々しく感じながらも「まあ、精神分析学で言う『躁的防衛』ですかね」などと答え、司会者はやっと納得する。

■人に病名をつけたい病

 荻原浩さんの新著『冷蔵庫を抱きしめて』(新潮社刊)のなかに「いまの世の中は、『人に病名をつけたい病』に罹っているのだ」というセリフがある。このセリフを発するのは医者ではない、心療内科を受診した側の患者の言葉である。百貨店で接客しながら思ったことをすべて口にしてしまう、という悩みを抱えたその男性に、メンタル医は「ADHD」「強迫性障害」「アスペルガー」などと次々と病名をつける。その人物の言葉だ。

■マスクが心地いい

 同書にはマスクを手放せなくなってしまった男も登場する。自分の容姿に自信がなく、他人の目が気になる。マスクをした途端、自分は誰にも見られていないと感じ、大胆な行動がとれるようになる。マスクが心地いい。外せない。となると次は出ている目だ。サングラス、帽子、エスカレートする男の行動の行きつく先は……。この男性は果たして病気なのだろうか?

■病気ギリギリのグレーゾーンが増えている

「私もそんなひとりかも」と苦笑いする精神科医の香山リカさんは「統合失調症や躁うつ病など従来からある精神疾患は治療法の進歩などによりそれほど手ごわい相手ではなくなりつつあるのだが、それと入れ替わるように『軽いけれど治りにくい病気』『病気かどうかもわからないような問題や状態』が増えつつあるのだ。よりわかりやすく言えば、『健康と病気のあいだのグレーゾーンが広がった』ということだ。」と語る。同書には8篇の短編に、あえて病名をつけるとするならば、摂食障害、醜形恐怖症、SNS依存症など、それぞれ悩みを抱えた“病気ギリギリ”の8人の人物が登場する。その誰もが最終的に専門家のカウンセリングや医療機関に頼らず、自分で解決の糸口をみつけ、心の問題と折り合いをつけている。

■僕らはみんな病んでいる

 香山さんは診断名をつけるまでもない、クスリを出すまでもない人に、病名を与えるのではなく、この本を勧めるという。「僕らはみんな病んでいる」と替え歌を歌う主人公といっしょに、日常生活のなかで回復の道のりを歩むことによって、自分の重荷も軽くなるのではないかと語る。もちろん重篤な症状では専門医への受診が基本だが、自分も病気なのかな? と思ったことは誰しもあるだろう。病院に行く前、この本を手に取ることもひとつの処方箋となるかもしれない。

デイリー新潮編集部