2030年危機で大学教授も大量失業へ 私大腐敗“諸悪の根源”は何か

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 私立大学が潰れる。大学倒産と教授失業時代が来る。私大は建学の精神を失い、経営も苦しいのに、文科省の大学改革に従わない。いま話題の私大は、京都先端科学大学しかない。国際教養系の学部も早稲田の成功だけで、注目を集めた秋田国際大は、創設者の中嶋嶺雄学長を失い失速した。私大は、話題の講義と魅力ある教員が、不足している。一流私大志願者も毎年減少し、借金が増える。2030年以降は教員の給与は確実に下がり、大学倒産が起きる。

 日本経済新聞は4月に、全国私大616校の三年分の財務諸表を検討し、およそ50%が赤字で、慢性赤字校が4分の1に達していると診断した。さらに、21年度は定員割れ大学も46%だという。

 私大経営者の間では、8年後の「2030年危機」が語られる。2030年の大学志願者予想は約50万人で、10万人もの余剰定員が見込まれ、倒産が日常化する可能性がある。数年前、筑波大学大学院の社会科学系学科が、廃止された。学生が来ないのだ。「失職」した教授たちが、ある大学の教員一人の募集に群がり、哀れを誘った。

 2040年には大学定員が20万人も余る見通しだ。昨年生まれの推計人口は、約85万人。大学進学率は50%強だから、18年後の大学志願者は40数万人にしかならない。国公私大の定員総数は60万人を超える見通しだから、単純計算で約20万人の定員枠が余る。学生が来なければ、教授はいらない。倒産と教授失業は必ず起きる。

死に体の学校教育法93条

 なぜ、大学は魅力を失ったのか。改革しないからだ。キリスト教は、宗教改革で生き残ったとの学問の真理に学ばないから、改革できない。日大理事長の隠し金事件は、私大の不正腐敗だ。私大はかつて理事長、総長の清貧さを誇ったのに、多額の報酬を取る理事長や学長がいる。

 文科省は2014年からの大学改革で、教授会の権限縮小、経営の透明化を求めたが、赤字大学の増加が現実を物語る。財務諸表の公表も及び腰だ。私大倒産、教授失業の原因は、大学数が700校を超えるまでに放置した政治にある。

 新設大学の教員審査も、問題が多い。あるオンライン大学の設置審査では、専門職経歴もなく、博士号もなく単著の論文業績数もないのに、大学講師の「実績」だけで「准教授」に認定した。業績審査は、論文タイトルだけの提出で、論文そのものの提出義務はない、論文をチェックしないで認定する「大学設置審査委員会」は、不真面目だ。

 大学諸悪の根源は「教授会全体主義」にあるとされたので、文科省は学校教育法93条の歴史的な改正を断行した。教授会から決定権を奪い「学生の入学、卒業及び課程の修了について意見具申」する機関にした。

 ところが、私大はこの改正を実行しない。法改正以降に認可された大学でも、改正93条を全く無視し、教授会が権限を行使したオンライン大学もある。早慶や有名私大では、なお教授会が既得権として権限を行使している。

 権限を全て「学長」に与えたのも、問題だ。改革とガバナンス意識のない「学長」が、報告をごまかし「学長独裁」の事態が生まれた。文科省は私大では「理事会が最終権限を持つ」と通達したが、無視されている。93条違反の大学への処罰規定を作ると同時に、「学長」への全権付与をやめ、私大では「理事会」や「評議員会」に権限を与えるべきだ。

 これ以上に問題なのが、大学教員の「教える力」だ。博士号は、研究者としての単なる運転免許証だが、絶対的な教育資格と誤解されている。教える力のない博士号取得者は、排除すべきだ。

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