2030年危機で大学教授も大量失業へ 私大腐敗“諸悪の根源”は何か

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公開されない「学生の授業評価」

 文科省は大学改革の柱として、「学生による授業評価」調査を20年も前に通達したが、一般公開は義務化しない。補助金を出しているのだから、一般公開させるべきだ。最近認可の大学でも、教授会と学長が「公表」を拒否した。公表しなければ、「不良教員」が横行する。

 多くの教授は、授業が下手なのに「馬鹿な学生に評価能力はない」と抵抗する。あるインターネット大学で、本部が「この授業を他の学生に推薦しますか」「同じ教授の他の授業も取りますか」との質問を設けたら、教授会が猛反発し削除された。「この授業に満足しましたか」の満足度調査が、教授は嫌いだ。

 文科省は、「リベラル・アーツ教育」を呼びかけているが、内容は曖昧だ。リベラル・アーツについて、多くの大学のホームページには納得のいく説明はない。他大学の同じような説明を、使い回ししているとしか思えない。

 リベラル・アーツ教育は、アメリカで発展した。移民国家アメリカに必要な教育で、文化や価値観の違う民族の融合と同一化のために、市民を生み出す教育だから、日本ではあまり役立たない。教育者デューイの「パブリック」の思想や「コミュニティ」概念が背景にある。

 日本でのリベラル・アーツ教育は、英語などへの苦手意識を解消し、海外の大学に留学させ、コミュニケーション(交渉)能力と文化理解度を高める方向で検討されるべきだ。

 新型コロナの感染拡大で、大学はオンライン授業を余儀なくされた。全面的なオンライン授業の展開で、オンライン大学への期待が語られたが、逆に対面授業の価値が認識された。なぜ「オンライン大学」は、評価されなかったのか。

 まず、カメラに向かって授業する能力と技術が、教授になかった。授業は、面白くない。ネットでの90分授業に、学生はついていけない。各種の調査では、ネット授業は最大20分が限度だ。さらにネットでの授業時間の単位計算の方法など、対面授業と違う制度が必要だが、まだ対応すらできていない。

 大学教育は「大学コミュニティ」への参加と帰属意識が大切だ。アメリカでは、カレッジ・コミュニティーを通じた人間形成の役割が、再確認されている。オンライン授業で、学生は「孤独感」を深めた。サークルもなく、教授と学生の対話もない大学は、大学ではないと改めて認識された。授業料が超低額のオンライン大学は、学生は集まるがなお赤字だ。

 私大が生き残る道はある。私大の使命は学生に授業料以上の付加価値をつけ、生きる意味とアイデンティティを与えることだ。私大の目的は「研究大学」よりも「教育、技術大学」だ。アメリカの大学教育は学生に技術を身につけさせ、学生と社会に貢献した。文科省は私大と教授に、研究業績よりも「教育業績」をより多く求め評価すべきで、教員採用システムも見直すべきだ。

 世界的な「研究大学」は作れなくとも、「世界一教え方のうまい大学」は準備できる。そのためには、改革の意思と教育能力ある教授の採用が不可欠だ。そうすれば「勉強の仕方と楽しさを教える大学」「人間と人生の意味を考える大学」「コンピュータやデジタル人材で、哲学する大学」「手に職をつける人材大学」など、日本一の大学を創れる。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、毎日新聞社にてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)など多数。

デイリー新潮編集部

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