亡き妻に合わせる顔がない… 41歳男性が陥った“許されざる”不倫関係の核心部分

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「好きになってはいけない人を好きになった」と言う人がいる。好きになってはいけない人なんて世の中にはいないと言う人もいる。いずれが正しいのかはわからない。ただ、「好きになって関係をもったら、いろいろやっかいなことになる」相手は確かにいるのかもしれない。【亀山早苗/ライター】

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「世間から見れば“不倫”と言われる関係だとわかっている。煮詰まっています。このままでいいわけがないし、正解も理解しているつもり。だけど決断ができないんです」

 会う前に、電話で苦しそうにそう言っていた佐竹雅斗さん(41歳・仮名=以下同)。

 実際に会うと日焼けした顔が精悍だが、よく見ると目が優しい。建設関係の仕事だけに「1年中日焼けしています」と恥ずかしそうに笑った。

 彼が苦しんでいるのは、この3年、つきあっている3歳年上の彰子さんが人妻だからだ。「この歪んだ関係」を終わらせなければと考えるようになり、雅斗さんの苦悩は深まっていた。

一目惚れした妻

 彼が、妻となった友里さんと知り合ったのは25歳のときだった。職場の先輩の結婚パーティの司会をしていた彼女に一目惚れした。周りに聞くと、友里さんは当時28歳。新婦の友人だとわかった。

「プロなのかと思うほど、司会進行がうまかったんです。しかも随所に巧みに笑いを入れてくる。芸人さんじゃないのと確認したほどでした。そういう女性って珍しいでしょ。それでパーティが終わったときに直撃したんです。芸人さんにならないんですか、どうしてそんなに楽しいしゃべりができるんですかって。僕はしゃべるのが苦手で、会議などで言いたいことも言えずに悔しい思いをすることが多かったので」

 一気に話しかけたあと、自分が失礼なことをしていると気づいた雅斗さん、「ごめんなさい」と必死に謝った。友里さんは笑いながら「お時間があったら、改めてお茶でも」と名刺をくれた。名刺を見ると、有名なメーカーではあったが、彼女は「ごく普通の」会社員だった。

 その日のうちにメールを送り、自分の携帯番号を書いておいた。すると翌日、彼女は電話をくれた。

「もしよかったら、仕事終わりにお茶でもと誘いました。最初から夕飯でもというのは図々しいと思って。すると彼女はいいですよと。どうして僕みたいな冴えない男の誘いを受けてくれるのか不思議でした」

 待ち合わせのカフェに行くと、彼女はすでに来て本を読んでいた。背筋がきれいに伸びたその姿を、彼は入り口でしばらく見ていたという。視線に気づいたのか彼女が顔を上げた。彼は自分でも信じられないような浮き立つ気持ちで近寄っていった。

「何を読んでいるのと聞いたら、夏目漱石だって。夏目漱石なんて教科書でしか知らない。思わずそうつぶやくと、『読んでみて。大人になってから読んだほうがおもしろいと思う』と。その後は好きな本とか映画の話をしましたね。日本の小説はあまり得意じゃないけど、僕は海外ミステリーが大好き。映画はふたりともフランス映画が好きと一致。今度、映画を観に行こうと話しました。お茶だけのつもりがお腹がすいてきたので、場所を変えて近くの居酒屋で軽く飲みながら、仕事の話などもしましたね。とにかく楽しくて時間が過ぎるのがあっという間だった」

 そこから週に1、2度は会うようになった。特に「つきあってほしい」と言った記憶はないが、気づいたら友里さんなしではいられなくなっていた。3ヶ月後には「結婚しよう」と言い、「まだ早い」と友里さんに笑って拒否されたこともあった。

「どうして早いのと聞いたら、あなたのことがまだよくわからない、と。結婚してから知ればいい、一生一緒にいたいんだと押しまくりました。会うようになって半年たったころ、また結婚してと言い、友里はうなずいてくれました。彼女の友だちに会ったり、僕の友だちに会わせたりし、双方の親と食事会をしてさっさと婚姻届を出したんです。彼女の気が変わったら困るから(笑)。僕にとってはそれほど大事な素敵な女性だった」

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