亡き妻に合わせる顔がない… 41歳男性が陥った“許されざる”不倫関係の核心部分

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恋心が覚めた彰子さんの一言

 今年のゴールデンウィーク直前、遅くなったが友里さんの七回忌をおこなった。友里さんの母親と弟、雅斗さんの母だけでと思っていたが、彰子さん夫婦にも来てもらった。

「終わってから、彰子さんの夫に誘われてふたりだけで一杯やりました。僕は何を言われるのか緊張しっぱなしでしたね。独身時代の友里のことをいろいろ聞かせてもらいました。帰りがけ、彼は『友里ちゃんを信じなさいよ』と言ったんです。この人は妻の不倫を知っている、彰子さんの嘘もわかっている。そう感じました」

 雅斗さんは18歳年上の男の背中を黙って見送った。もうじき60代になる彼の背中は、決して老いてはいなかった。人生をしっかり背負って生きている男の背中だと雅斗さんは感じたという。

「彰子さんが何のために僕に嘘をついたのかはわからない。もしかしたら長いつきあいの中で、友里に何か恨みがあったのかもしれないし、夫に不満があったのかもしれない。それはもう、どうでもいい。ただ、彰子さんの夫に会って、やっと決心できました。これ以上、彼を裏切ってはいけないと思った」

 連休中には穏便に別れますと雅斗さんは私に言った。連休明け、彼から連絡があった。別れようと言ったが彰子さんが納得していない。娘にバラしてやると脅された、と。

「そう言われてさらに目が覚めました。『そんなふうに脅迫するなんてショックだ。僕は彰子さんのことを本気で好きだったけど、あなたは本気じゃなかったんだね』と言ってやりました。この3年が急に色褪せて見えた。恋が終わるときってこういうものなんでしょうか」

 急速に自分の中から失われていく恋心に、雅斗さんは戸惑っていた。そして戸惑いながらも、きちんとケリをつけて友里に報告したい、謝らなければとつぶやくように小声で言った。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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