頂上作戦を陣頭指揮したマル暴刑事が語る 関東ヤクザ界のカリスマ「極東会」トップの死の波紋

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「極道社会のフィクサー」と称された、国内最大級の的屋(テキヤ)系組織トップの訃報が波紋を広げている。警察当局による締め付けの強化で組織の弱体化を迫られるなかにあって、なお異彩を放ち続けた“カリスマ”の死は、ひとつの時代の終焉を象徴しているという。

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 5月7日、指定暴力団「極東会」の松山眞一元会長(94)が死去した。

 東京・新宿歌舞伎町に本拠を置く極東会は全国に25ある指定暴力団のひとつで、構成員は約390人(2021年末時点)。勢力範囲は東京や埼玉を中心に1都12県にまたがる。

 全国紙社会部記者の話。

「松山元会長は15年に詐欺の容疑で逮捕・起訴され、懲役1年6カ月の有罪判決(執行猶予3年)を受けました。それを機に引退を宣言しますが、警察当局はその後も松山元会長が事実上の極東会トップと見てきた。今回の死去について、警視庁は事件性はないと判断しています」

 起訴の翌年には、極東会系の組員が聴覚障害者らから約1億8000万円を騙し取ったとされる事件について、被害者らが松山元会長らを相手に損害賠償を求め提訴。東京地裁は松山元会長の代表者としての「使用者責任」を認めたが、松山元会長側は控訴。18年、東京高裁で和解が成立する形で決着をみた。

「頂上作戦」の始動

 前述の松山元会長が逮捕に至るまでの捜査は、警視庁内で「頂上作戦」と呼ばれた。その端緒となった極東会組員による同会組長に対する「指切重傷傷害事件」の現場捜査を指揮したのが、当時、警視庁組織犯罪対策第四課第3暴力犯8係の係長だった櫻井裕一氏だ。

 18年に退官するまでの40年余り、“マル暴”刑事として最前線でヤクザと対峙してきた、その櫻井氏が話す。

「同じ指定暴力団の山口組や住吉会、稲川会などと比べると、極東会は組員数こそ少ないですが、関東のヤクザ社会のなかでは一目置かれる存在でした。的屋系組織としては国内最大級かつ老舗。ヤクザ社会での存在感は巨大組織と匹敵するものがあり、警視庁は虎視眈々と壊滅の機会を窺っていたのです」

 会合でのイザコザから、極東会系の組長が別の極東会系組織の組員らに自宅を襲撃され、ニッパーで無理やり小指を切断された指切事件。この内輪揉めが、警視庁にとってチャンスと映り、すぐに捜査が開始。櫻井氏の指揮のもと、同事件の実行犯6人全員の逮捕に漕ぎ着け、さらに極東会組員の発砲事件や脅迫事件へと捜査は広がる。そして最終的に詐欺事件で松山元会長を立件したことで「頂上作戦」は結実したという。

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