肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方2 「名医ランキング」の功罪と病院の選び方

ドクター新潮 医療 がん

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細工が可能なランキングの実態

大場:単刀直入なコメントありがとうございます。病院の所属性だけで手術の腕が保証されているわけではないのは本当ですね。あと、私もクリニックを立ち上げて、開業医の土俵に立ってみると、自身を名医に仕立てあげるやり方が山のようにあると肌で感じています。例えば、学術的な評価も専門性もない開業医が、まるで名医であるかのように取りあげられているインタビュー記事を見るにつけ、そんな風に思うのです。進藤先生のご指摘通り、医師どうしの間でも、優劣に対する一定の評価が難しいのに、一般の方たちが見かけ上の情報で操られてしまうのは仕方ないのかもしれません。

 かつて、あるムックの刊行の際に、出版社が当時の肝胆膵外科学会理事長の名前を無断で使用して、広告募集を働いていたのが問題になりました。事務局から「学会としては一切、営業活動に関与していない」旨の緊急周知がされたのを覚えています。この本、いまでもロングセラーのようですが、私のクリニックにも「〇百万円を払いさえすれば目立つ広告を掲載する」といった勧誘がきています。そのような精神性では、本当に正しいフェアな情報発信は難しいと個人的には思ってしまいます。

進藤:手術件数、治療件数と言ってもランキング本やサイトによって統計手法、調査手法がバラバラであるという点も混乱ポイントの一つです。まともな出版社からは手術件数に関するアンケートが毎年来ますが、ランキング本の中には調査手法や情報源が不明であるものも多数存在しています。ランキングの見せ方というものは正直、如何ようにも細工が可能です。

 例えば肝がんの治療件数というランキングであれば、手術とラジオ波治療という全く異なる治療を一緒にカウントするのか、別々にカウントするのかによって順位は大きく変わってきますし、「肝がん」を「肝臓の悪性腫瘍」と拡大解釈し、いわゆる肝細胞がんだけではなく転移性肝がんやその他の肝悪性腫瘍の切除件数まで入れてくる施設もあります。出版社側もその内容を精査する術がありませんから、こうしたものはあくまで参考程度にしておくのが無難だと思います。我々は手術件数を競っているわけではありません。

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