「沖縄署騒動」はなぜ起きたのか…「高校生失明事件」の捜査が長引く「2つの特殊事情」

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

県警が気にした「デマ情報」と警官の「出自」

 一方、騒動の発端となった高校生の負傷事案では4月21日に新たな展開があった。この日、県警捜査1課による中間報告として、科学捜査研究所の分析の結果、警察官が所持していた警棒に付着していたDNA型と高校生の型が一致したと明らかにしたのだ。

「この発表で、高校生の負傷の原因が警棒によるものと特定されたことになります。警察官に過失があった可能性も視野に、立件に向けて捜査を進めているとも明かしました。また県警側は、高校生が暴走行為に参加していなかったことも改めて否定。SNS上で高校生に対する中傷やデマが広がっている現状を踏まえての対応とみられます」(前出の記者)

 事件後、ネット上には、「逃げたから悪い」「交通ルール守らなかったから自業自得」など、根拠不明の情報を元にした誹謗中傷や個人攻撃の言説が氾濫した。大手ポータルサイト「Yahoo!」のコメント欄、いわゆる「ヤフコメ」でも、「警棒からDNA検出」の件を報じた記事に高校生を非難するような投稿が相次いだ。こうした状況が県警の対応にも影響を及ぼしたようだ。一方で、事案の発生から中間報告までに約3カ月の時間を要したことも、憶測やデマを広げる一因になったことは否定できない。なぜこれほど時間がかかったのか。ある県警関係者はこう内幕を明かした。

「この一件では、県警が慎重に扱わなくてはならない条件が揃っていました。県警側がまず懸念したのは、当該の警察官の属性です。彼は宮崎県警から『特別出向』で赴任している立場でした。『ないちゃー(内地人)』が『うちなーんちゅ(沖縄人)』に重傷を負わせたという事実が明るみに出た時の世間の反応を、相当気にかけていたようです」

警察官の心象

 もうひとつ、県警幹部の頭痛の種となったのが、当夜の警察官の対応のまずさだった。

「警ら中の警棒の携行については、県警内では特に問題視されていません。過去には、暴走行為の取締中に相手に重大な負傷を負わせて、訴訟沙汰になりかけたこともあったそうですが、当時の装備品はもう使っていません。警棒の使用についても、職務上『正当』と認められれば特に問題にならなかったはずなのですが、この警察官の対応が致命的だったのは、問題の“事件”について上司や同僚に報告していなかったことです」(同・県警関係者)

 地元メディアの報道などによれば、高校生が負傷した“事件”を県警が覚知したのは、「救急」からの連絡を受けてからだったという。高校生は負傷した後に自ら119番通報して病院に救急搬送されており、県警側が事態を把握したのは高校生の発したSOSの後だったことになる。

「警察官は当初、県警の聴取に『一瞬のことでわからない』と話していたなどと報道されています。真夜中の視界が悪い中での出来事で、はっきりと視認できる状況でないのは当然なのですが、警察官は警ら中に誰かと接触したという事実すら報告していなかったそうです。こうした警察官の対応は、明らかに基本動作から逸脱したものだった。県警側がすぐに『適正な対応だった』と発表できなかったのはそのためでもあるのです」(同・県警関係者)

次ページ:警察官も立件される方向

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。