【知床観光船事故】「KAZU I」船体捜索と引き揚げ費用で強欲社長にいくら請求すべきか

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社長には資産がない!?

 今回のケースなら、漁船のほうが参考になるかもしれない。2009年、長崎県・平戸島西方の沖合で、「第11大栄丸」が転覆した。乗組員10人が救助されたが、12人が行方不明となった。

「『第11大栄丸』は135トンの巻き網漁船でした。この時、水産庁は『技術、装備がない』、会社側も『巨額の費用がかかる』と、一度は引き揚げを拒否する姿勢を見せたのです」(同・記者)

 引き揚げを求める18万人の署名が水産庁に提出されるなど世論の応援もあり、約3億円の費用を投じて引き揚げが行われた。

「マスコミ各社も、『KAZU I』の引き揚げには数億円の費用がかかると報じています。海保や国交省の関係者に取材するだけでなく、こうした過去の事例も参考にしているのでしょう」(同・記者)

 更に「誰が費用を負担するのか?」という問題にも関心が高まっている。

 FNNプライムオンラインは5月6日、「【独自】『KAZU I』引き揚げ 国が“負担”へ 桂田社長 保険金から捻出困難か」との記事を配信した。

「記事は《政府関係者への取材でわかった》とした上で、《関係者の1人は、「運航会社への費用請求は検討する」とする一方で、「社長には資産がない。国が負担せざるを得ない」と説明している》と報じました」(同・記者)

本当に困難なのは……?

 東海大学海洋学部の山田吉彦教授は、「国は“優先順位”を考えて、費用負担を決めたのだと思います」と指摘する。

「今は行方不明になっている方々の捜索が最優先です。仮に捜索や引き揚げの費用負担を巡って裁判が起こされれば、貴重な時間がどんどん失われることになります。捜索だけでなく引き揚げの費用も、とりあえず国が負担することで、作業を迅速に進めていくという判断を下したわけです」

 引き揚げ作業は困難なものになるという報道も多いが、山田教授は「確かに困難ですが、実情は少し違います」と言う。

「引き揚げ作業を技術的な観点だけで考えるなら、それほど難しいわけではありません。本当に大変なのは調査でしょう。現場の潮流が複雑で激しいという状況は、調査の大きな障害になると考えられます。正確に表現するなら、『引き揚げを正式決定するに足る調査を行うことが困難かもしれない』ということになります」

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