ロシア軍を苦しめるウクライナ軍“伝説のスナイパー” 劇的に変化した彼らの重要な役割とは

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一流の狙撃兵とデマの関係

 冒頭でご紹介した、

◆元カナダ軍・ワリ狙撃手がウクライナに。"狙撃"について元米陸軍将校が解説(週プレNEWS:3月20日)

◆世界最高のスナイパー“奇跡の生還” 「抹殺」情報拡散も…ロシア軍と戦う決意(テレ朝news:4月25日)

という2本の記事には、ワリという名前のスナイパーが登場する。彼こそ、王立第22連隊の名スナイパーだった。

「彼はシリア内戦にも義勇兵として参戦しました。そしてウクライナ侵攻にも駆け付けたのです。王立第22連隊の戦術を、まさにウクライナでも実行しているのでしょう。その戦果が大きかったことは、ロシアが嘘の戦死説を流したことでも明らかです。女性スナイパーのビロゼルスカさんも、ロシアメディアが死亡説を流しました」(同・軍事ジャーナリスト)

 スナイパーの世界では「戦死説が流布されたら一流」という考え方があるという。

 自軍の優秀なスナイパーは、兵士たちの誇りだ。「あのスナイパーがいる限り、我が軍は無敵だ」という安心感を生む。当然ながら士気は鼓舞される。

 だが、優秀なスナイパーが戦死したり、捕虜になったりすれば、前線の兵士は落胆する。それを狙って、敵軍がデマを流すという。

縁の下の力持ち

「ウクライナ侵攻が始まる前、王立第22連隊はウクライナに駐在し、スナイパーを中心とした新戦術を教えました。ウクライナ軍は旧ソ連製のドラグノフSVD対人狙撃銃を使っていました。しかし、ドラグノフは設計が1964年と古く射程距離も短いため、新戦術の実行に支障が生じました。そこでウクライナ軍は、アメリカ製ライフルと同じ能力を持つ国産ライフルの製造に踏み切ったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ウクライナは冷戦下の頃から軍需産業が盛んだった。激戦が報道されているハルキウには銃器の工場があり、ロシア製の性能を凌駕する国産ライフルの製造も開始していた。

「今のハルキウは激戦地ですから、銃器の工場も破壊されたかもしれません。ただ、ロシア軍の侵攻前に王立第22連隊から教育を受けたということは、今となっては非常に意味のあることだったと分かります」(同・軍事ジャーナリスト)

 ウクライナ軍がロシア軍に善戦した理由として、対戦車ミサイルや自爆型ドローンの活躍が挙げられている。だが、スナイパーも重要な役割を果たしていたのだ。

「ウクライナ軍や義勇兵のスナイパーが活躍しているからこそ、ミサイルやドローンがロシア軍に損害を与えているのです。ロシア軍の少将や大佐も、大半はドローンの爆発などで戦死したのであり、狙撃はレアケースなのではないでしょうか。ただ、その指揮を行ったのがスナイパーです。彼らはまさに、“縁の下の力持ち”だと言えます」(同・軍事ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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