ロシア軍を苦しめるウクライナ軍“伝説のスナイパー” 劇的に変化した彼らの重要な役割とは

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敵の出現

 冒頭で紹介した4本の記事のうち、2本はウクライナ軍とロシア軍の女性スナイパーについて報じたものだ。

 ウクライナ軍のスナイパーは、オレナ・ビロゼルスカさん。少なくとも10人を狙撃し、3度の叙勲を受けたという。

 記事の内容は、ロシアサイドが死亡情報を流したが、それはフェイクニュースだと判明した、というものだった。

「スナイパーは敵の出現を、長時間にわたって待ち続けます。その間、できるだけ動かないことが求められます。また、数キロ先を監視し、たとえ何の変化がなくとも、集中力を切らしてはいけません。実は、男性より女性のほうがスナイパーに向いているという調査結果もあるようです。女性スナイパーのほうが微動だにせず、辛抱強く待ち続けることが可能だというのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ひたすら待ち続けていると、遂にロシア軍の戦車部隊が出現した。いよいよスナイパーの出番だ。

「アメリカ軍が使う対物ライフルのバレットM82は、12・7x99mmNATO弾を使用します。直系が12・7ミリということですから、非常に大きな弾丸です。一般の兵隊が使う小銃の弾は5・56ミリですから、その凄さが分かるのではないでしょうか。ただ、これほど大口径の弾丸を使っても、戦車には効きません」(同・軍事ジャーナリスト)

王立第22連隊

 スナイパーが狙うのは、例えば戦車の傍を走る軍用車両だ。

「フロントガラスを撃ち抜けば、戦車部隊は『敵襲だ』と急停止します。スナイパーは、ロシア軍の部隊がキルゾーンで止まることを狙って狙撃したのです。次の瞬間、ロシア軍の戦車部隊をめがけて、対戦車ミサイルや自爆型ドローンが降ってくるというわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

 現代の戦争でスナイパーとスポッターが担うのは、「敵軍の発見と、敵軍の誘導」という重要な任務だ。

 距離3キロというアドバンテージを活かし、対物ライフルで敵軍の足を止め、キルゾーンに追いやるというわけだ。

「もちろん、スナイパーが敵軍の指揮官を見つければ、狙撃を検討するでしょう。対人狙撃がなくなったわけではありません。とはいえ、それよりも敵軍を誘導するという任務が重要視されています」(同・軍事ジャーナリスト)

 軍事ジャーナリスト氏が、戦場におけるスナイパーの役割が変わったことに気づいたのは、2011年から始まったシリア内戦だったという。

「カナダに王立第22連隊という、優秀なスナイパーで知られる部隊があります。隊員が長距離狙撃の世界記録を樹立したこともあり、その距離は3・5キロでした。この連隊が、スナイパーを司令塔とする新戦術を立案したのです。そのOBがシリアに義勇兵として渡り、対ISISの戦闘で使ったと言われています」

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