娘の受験失敗で新興宗教、「教祖の愛人」になった妻 6年ぶりに帰ってくるも新たな不幸が…52歳夫が語る後悔

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「お受験ママ」に豹変…

 娘が3歳になるかならないかのうちから、珠美さんは「国立か私立の小学校に入れる」と言い出した。私立に入れるほどの経済的余裕はない。しかも、小学生のうちから電車通学はかわいそうだと忠輔さんは猛反対した。せめて中学から、娘自身が望めばという条件をつけた。

「知らないうちに珠美は娘に、『自分が勧める私立中学がどれほどいいところか』を刷り込んでいったようです。娘が小学校4年生になるころには、『~という私立中学に行きたい』と言うようになっていました。本当に行きたいのか、どうしてなのかを聞くと、その中学のいいところを羅列するんですが、なんだか暗記して言わされているような気がしましたね」

 4年生から塾に通い始め、あとの2年間は勉強三昧だった。娘は運動神経がよく、地域の野球チームで活躍もしていたのだが、5年生の夏休み前にはやめてしまった。本当はやめたくないんだろと忠輔さんはそれとなく尋ねてみたが、娘は頑なに「やめなければ中学に受からない」と言い続けた。

「子どもの受験で妻が暴走し、最後は離婚に至った同僚がいるんですよ。だから僕も気をつけていました。必要以上に勉強させたり、娘に暴言を吐いたりしないように。あの時期は怖かったですね。妻はもう受験以外、何も考えられないような状況でしたから」

 受験前に忠輔さんの父が病で倒れ、彼はそちらのサポートにも追われた。彼には姉がいるのだが結婚して遠方に越したため、親のことは彼自身が動くしかなかったのだ。

 そして娘は、がんばったものの受験前に風邪をひき、当日は最悪のコンディションとなって不合格。珠美さんは泣き崩れて娘と夫を非難した。

「がんばったのは私だけだ、あんたたちは結局、真剣に取り組まなかったと怒鳴り散らして。娘は泣いて謝っていたけど、『謝らなくていい』と私は言いました。地元の中学でのんびり楽しくやればいい。中学生がラッシュの電車に乗ることを、おとうさんは前から嫌だと言ってただろ、だから本当はよかったと思ってるんだよと本音を言いました。娘も少しホッとしたような顔をしていましたね。妻だけは般若のような顔で私を見ていた。あのときの顔が忘れられません」

 もう世間に顔向けできないだの、~ちゃんはあの学校に受かったのに、あの子はあなたより成績が悪かったのにと言い続ける珠美さんに、「いいかげんにしなさい」と彼は言った。娘の人生を母親が決めるのはよくない。これから娘にも、そして珠美にも楽しく生きてもらいたいと本心から説いた。

引き出しに「札」、クローゼットに「赤富士」

 それから数週間後、彼がたまたま早く帰ると、見慣れない来客がいた。珠美さんと同世代の女性だったが、彼の顔を見るとそそくさと帰っていった。誰なのか聞いても「パートで知り合った人」としか言わなかったが、彼は腑に落ちないものを感じていた。

「娘が本格的に受験準備をするようになってから、妻は私と寝室を別にして自室を作りました。夜中まで娘の勉強につきあうからという理由だった。そのときの来客の雰囲気から、なぜか胸騒ぎがして……。ある日、代休だったんですがいつも通りに出社するふりをして、妻がパートに出かけたあと自宅マンションに戻りました。妻の部屋に入り、ドレッサーの引き出しを開けるとそこにあったのは“お礼(ふだ)”でした。受験があったから合格祈願にもらってきたのかと思ったんだけど、なんだか妙なお札なんですよね、手作り感がすごいというか。クローゼットを開けて愕然としました。いきなり額に入った赤富士の絵があり、その前に数珠みたいなものが置いてあった。赤富士の絵も小学生が絵の具でいたずら描きしたような代物でしたね」

 彼はあわてて妻のパソコンを立ち上げた。怪しいファイルを発見して開けてみると、それはどうやら新興宗教関係だった。妻は知らないうちに、その宗教に入信していたようだ。

「その宗教を調べてみました。ほとんど情報はなかったんだけど、法外な金をとられたとか教祖の悪口とかが数件ヒット。とにかくあとは妻に聞くしかない。少なくともあの赤富士の絵にいくら出したのかは聞いてみなくちゃと。私は何かを盲目的に信じることが好きではないんです。妻が信じるものをやめさせる権利もないかもしれないけど、怪しい新興宗教の話はときどき聞くから、このままでいいとは思えなかった。嫌なことが起こり始めている。そんな気がして焦りました」

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