遺体に「かぎ十字」の焼き印…ロシアが「民間人虐殺」を繰り返す“明確”な理由

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今さら総司令官を任命

 ロシアの目的は単なる併合ではなく、最初から「完全なロシア化」をもくろんでいたのではないか。そんな疑いが日に日に強まっている、と大木氏は指摘する。

「そうだとすると、今後はいくら非難されようが、占領した地域では残虐な行為でも何でもやるはずです。ABC兵器(核兵器、生物兵器、化学兵器)の中で、すでに化学兵器を使用したという報道もありますが、さらに大規模に使用してくる恐れもあるでしょう」

 首都キーウから撤退したロシア軍は今後、ドネツク州などの東部に戦力を集中させると見られている。そんなタイミングで報じられたのが、ウクライナでの軍事作戦を統括する総司令官が任命された、とのニュースである。

「通常の軍事作戦であれば、総司令官は必ず置かれるのですが、それが今までいなかったというのはにわかには信じられません。ウクライナ軍の抵抗をほとんど考慮していなかった、ということなのでしょう」

 と、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏。拓殖大学海外事情研究所教授で元時事通信モスクワ支局長の名越健郎氏もこう言う。

「今さら総司令官を置くというのは、これまでの作戦がうまくいっていないのを認めていることだと思います」

5月9日までのロシア軍の目標は

 総司令官に任命された、と複数の米メディアに報じられたのは、ロシア軍の南部軍管区のトップだったドボルニコフ上級大将。サリンが使われた、との指摘も出ているシリア内戦で、介入したロシア軍の軍事作戦を指揮した人物だ。

 東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏は今後の節目として、ロシアの対独戦勝記念日である「5月9日」を挙げる。

「ナチスを倒した記念日である5月9日に勝利宣言ができれば国内的には最も良い。逆にその時点でボロ負けしていると非常にかっこ悪いわけです」

 とした上で今後のシナリオをこう分析する。

「5月9日までの見通しは大別すると二つあります。まず一つ目は、その日までに果たせたことをもって、目標達成、と主張する可能性。二つ目は、何らかの目標を達成しようとする可能性。例えば、ウクライナ東部を広範に占領することなどです」

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