遺体に「かぎ十字」の焼き印…ロシアが「民間人虐殺」を繰り返す“明確”な理由

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荒唐無稽な主張がロシア軍の一部に浸透

 女性や子供までをも無差別に殺害し、世界を慄然とさせたブチャの大虐殺。なぜロシア軍は人を人とも思わぬような行為に及ぶのか。その謎を読み解く上で重要なのが、「ナチス」というキーワードである。

 ロシアのプーチン大統領はここ数年、ウクライナ政権を「ネオナチ」と呼び続け、ウクライナへの侵攻についても「ナチ化を防ぐ」ためだと主張した。無論、ウクライナ及び同国を支援する西側諸国がかような論理を受け入れるはずもないのだが、驚かされるのは、この荒唐無稽な主張がロシア軍の一部に浸透している点。冒頭で触れた女性は狂信的なロシア兵になぜか“ナチス認定”され、「かぎ十字」の焼き印を押されたのだろう。

侵攻前から住民殺害、略奪などを計画か

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)の著者で現代史家の大木毅氏が語る。

「当初、私はこう考えていました。ロシア軍は元々もくろんでいた“無血進駐”がかなわず激戦になり、そのため大義名分として使われていた『ナチを倒す』というイデオロギーが前面に出てきて、民間人の大量殺害につながっている、と。しかし、キーウ近郊でロシア軍撤退後に住民が殺害、埋葬されている様子が明るみに出たことで、“これはもっとひどいことなのかもしれない”と感じました」

 すなわち、戦争が思うようにいかないからイデオロギーが前面に出てきたのではなく、

「侵攻する前から『ウクライナのネオナチを倒す』『ウクライナは許されない悪である』というイデオロギーを基に、住民殺害や強制移送、略奪などの全てが計画されていたのではないか、と考えるようになったのです。ロシア軍が大量の遺体を埋めるための資材を持ち込んでいるというニュースに触れ、そう考えるようになりました。最初、ロシア軍は損害はわずかだとみていたはずですから、自軍の死傷者のために大量埋葬用の資材を用意するわけがない」(同)

 では、何のためにそれらの資材を用意したのか。

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