45歳男性は「同じ女性と3回結婚」 自らの浮気で訪れた3度目の離婚危機の結末

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3回目の離婚は回避

 すでに40歳になっていた。お互いにいいところも悪いところもわかりきった上での3度目の結婚で、ようやく落ち着いたように見えた。ところが、数年後、裕弥さんが人妻と恋をしてしまった。志津子さんにはバレなかったが、娘はなんとなく感づいていたようだ。

「ある日、職場に派遣の女性が来たんです。一目見て、『この人と前世で何かあったんじゃないか』と思った。いや、僕はそういうスピリチュアルな話は苦手だし、まったく信じていません。それなのにそう思ってしまった。その日の帰りがけに、彼女のほうから『あの……、以前、お目にかかったことがありますか』と言われて。僕もそう思っていたんですと答えて、出身地とかあれこれ照合したんですが、会ったことはない。でもなぜか尋常ではない引力を感じたんですよ」

 何の先入観もなく惹かれ合い、最初のデートでホテルへ行ってしまった。こんなことがあるのかと裕弥さんはしばらく夢見心地だった。会えば会うほど惹かれていく。

「そのころちょうど、ひっそり仕事をしていたはずの僕がなぜかプロジェクトチームの補佐役に指名されて忙しくなったんです。妻のほうは地位が上がったせいか、少し時間の自由がきくようになった。だから食事も半々で作るようになっていました。どうにもならないときは娘が留守番してくれたし、ときには娘が食事を作ってくれることもあった」

 だから週に1度か2週に1度は、裕弥さんもデートする時間が作れたのだ。だが半年ほどたったとき、高校生になった娘がこっそり言った。

「パパ、このところヘンだよ。恋してるでしょ。全然、地に足がついてないもんね」

 慌てふためく裕弥さんをチラッと見て、娘はさらに言った。

「ママは気づいてないと思うよ。あなたたち夫婦には私、さんざん振り回されてきたから、今さら何があっても驚かないけど、揉め事だけはやめてよね」

 そのまま学校へと出かけていった娘の背を見ながら、彼はしみじみと結婚生活を振り返ったという。それと同時に、あんなに燃えていた恋心が急速に冷めていくのを感じていた。

「娘はいろいろなことがわかっていたんでしょうね。娘なりに寂しいこともつらいこともあったんだろう。そう思うと、大人の僕たちが子どもで、娘が大人に見えました。その日、帰宅した娘に『今までいろいろごめん』と謝ると、『なにが?』と言ったあと、『人生は一度きりだから、みんな好きなように生きればいいんじゃない』って。志津子が『でも、家族は仲良くしようね』と言い出したので、娘が呆れたように『ママがそれ言う?』とツッコんでました。普通の家族形態ではなかったけど、志津子と僕の組み合わせではこういう家庭しかできなかった」

 それでも妻も自分も、娘だけは心から愛していると言い切れる。裕弥さんは真摯な表情でそう言った。

 妻と自分と大学生になった娘。これで夫婦が落ち着くかどうかはまだわからない。だが、「3回目の離婚はしない」のが夫婦の目標なんですと、彼は朗らかに笑った。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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